前回、命は助かったものの、「しろがね」となってしまったエレオノール。
彼女はアンジェリーナの願い空しく、戦いに生きる人生を送ることとなるのでしょうか・・。

そして戦いは終わり、正二とギイはどうするのでしょうか。

感想です☆





サーカス~最終幕第37幕 「そして歴史は現代へ」





※以下、ネタバレあり※












◎あらすじ◎

エレオノールが「しろがね」になってしまったことを、悲しむ正二(しょうじ)。
するとギイは、エレオノールは死んだのだ・・と正二に言う。

その意味を問う正二に、ギイは説明する。
エレオノールは出産時のトラブルで死んでしまった。
そしてアンジェリーナもその時に体を痛め、姿を消してしまった。

そのため、「柔らかい石」の行方は分からないー
そういう筋書きにしよう、と。


「しろがね」を欺く嘘をつくー
正二はギイの真意を知り、それに了承する。
仲間をだます、苦しい嘘だ・・ギイはそう言いながらも、そうするしかない、と決意する。
それより他に、エレオノールを呪われた運命から救う道はないのだ、と。



そして、2人の「しろがね」の工作と、エレオノールの人生が始まるー。

黒賀村の村はずれの古い土蔵、そこにエレオノールは住むこととなった。
それを知っているのは、正二とギイと、村の数名だけ。
2人はそこを、1か月ごとに訪れていた。

その日も2人が土蔵を訪ねると、中からエレオノールの泣き声が聞こえてきた。
怖い夢を見て泣いている・・と手伝いの女性に聞き、ギイは中へと入る。

時は1930年。
あの事件から20年経ち、エレオノールが4歳になった頃だった。


怖い夢を見たのか?とエレオノールに声をかけるギイ。
「しろがね」は5年に1歳しか年を取らない。
だから彼女は見た目は5歳でも、20歳分の精神年齢のはずだった。

だがなぜかエレオノールの中身は、外見と同じ5歳程度だった。
それは、20年間一度も外に出たことがないからかもしれなかったー。

ギイの来訪に気付いたエレオノールは、夢の内容を話しだす。
その姿を、扉の外で見つめる正二。
彼は事件以来、一度もエレオノールと会わなかった。

公けには、エレオノールは出産時に死んだことになっている。
別人として生きなければならない彼女は、父親の顔を知らないほうがいいのだ・・。

それが、正二が考えて出した結論だった。


エレオノールは、ギイに夢の内容を話す。
夢の中、彼女はとても暗くて狭い部屋に閉じ込められている。
そこには一つだけ窓があって、そこに優しい人が来てくれるのに、彼女はそこへ行くことができない。

そのためもがいていると、彼女の後ろに穴が出来る。
その穴からは人形を操る手が出てきて、彼女を殺そうとするのだー。

そこから逃げようとエレオノールが振り返ると、周りはいつのまにか菜の花畑になっている。
するとそこに、真っ黒な大きな男がやってきて、彼女の首を絞めるのだー

そこまで言うと、エレオノールは恐怖で再び泣き出してしまうのだった。


話を聞いていた正二は、エレオノールの心に複数の記憶が入り込んでいる、と予想する。
彼女が飲んだ生命の水には、フランシーヌ人形が溶けている。
人形を操る手や、首を絞められた記憶は、彼女のものなのだー。

それを聞いたギイは、他の記憶は誰のものだ?と考える。
狭い部屋に閉じ込められていた記憶ー
そこまで考えて、彼はフランシーヌ人形の話を思い出す。

彼女は、モデルとなった人間の髪の毛を植毛されていると言っていた。
ならばその人物の記憶もまた、エレオノールの中に入り込んでいるのではないだろうか。

そう考えた2人は、どう対処するか悩む。
幼いエレオノールの精神では、次第にその記憶たちを受け止めきれなくなる。
このままでは、彼女の心は記憶に乗っ取られてしまうかもしれないのだ。


考えた末、ギイは自分にエレオノールを預けてくれないか?と正二に頼む。
アンジェリーナは最期まで、エレオノールの幸せを願っていた。
それを約束した自分は、エレオノールを絶対に幸せにしなければいけないのだ、と。

だが彼女は、銀目銀髪になってしまった。
これでは、「しろがね」たちの目は欺けない。
それに、彼女が黒賀村で生きていることが分かったら、全ての嘘がバレてしまうー

だからギイは、エレオノールを連れていくことにしたのだ。
自分の手で、彼女を「しろがね」にするためにー!


そうして2人は、旅に出た。
ギイは、エレオノールがゾナハ病で苦しんでいたところを助けて「しろがね」にした、という設定を通した。
またオートマータには決して彼女に触れさせず、常に自分の力で守った。

その上で、彼はエレオノールに戦う方法を学ばせた。
オートマータと戦うためではない。
彼女が自分の幸せを阻む全てと戦える方法をー。

世界中歩きながら、ギイはエレオノールに色々なものを見せ、学ばせた。
そうすることで、彼はエレオノールに教えたのだ。
君は君自身だ。他人の記憶など、関係ないーと。


それから15年間2人は旅を続け、その後エレオノールはキュベロンで人形操りの訓練を受けた。
そして訓練を終えると再び、ギイと世界へと出て行ったのだったー。


それから更に22年経った、1982年。
正二はキュベロンを訪れていた。

ルシールたち最古の「しろがね」と対面した正二。
彼は、一番若い「しろがね」を日本に派遣してほしい、と彼女たちに頼む。
その理由を訊かれ、正二は説明する。


1910年来、行方不明になっていたアンジェリーナが見つかった・・。
だが彼女は既に亡くなっており、「柔らかい石」も行方をくらましていた。

その後、自分は彼女が生前言っていたことを思い出した。
「柔らかい石は、いい笑顔の者にー」

彼は話す。
その持ち主はきっと日本にいるだろうから、それを探す「しろがね」が必要なのだ、と。
そして「柔らかい石」を持てるのは子供のみ。
子供を調べるのであれば、年の若い女性のほうが都合がいいのだー


彼のその話は、全てギイと考えた出まかせだった。
エレオノールが「しろがね」として戦えるようになったら、2人は彼女を日本に呼び戻そうと考えていた。
そうすれば、彼女は正二のもと、ついに安全な生活を手に入れられるからー。

だからそのためには、彼女を日本に行かせる口実が必要なのだ。
1930年に立てたこの計画を、2人は今実行に移そうとしていたー


だが、それを阻もうとする動きは、既に生まれていたのだったー。













エレオノールとギイの旅。


今回は事件の後の、エレオノールの話でしたね。

勝が知りたがっていた、ギイとエレオノールの関係。
それは軽はずみに聞いてはいけないような、壮大な計画を伴った関係だったのです。


初めから見ていきましょう。

エレオノールは生命の水を飲んだことで、「しろがね」としての人生を余儀なくされてしまいました。
それを憂いた正二とギイは、彼女を死んだことにします。

アンジェリーナの願いを叶えるためには、エレオノールが「しろがね」であることは気づかれてはいけないー!
そのため2人は、仲間をも欺き続ける運命を選択したのでした。


そしてエレオノールを隠す生活が始まりました。
ずっと出入りしていたら怪しまれるので、2人は月に1度だけ黒賀村を訪れます。

エレオノールが住むのも、存在を悟られないため土蔵です。
しかも、彼女はそこから出ることすら許されなかったのです!!

仕方ないこととはいえ、子供がずっと閉じ込められて暮らしているのは、辛いものがありますね・・。


おまけに、彼女は事件以来、正二に会っていないのです!!
2人が親子だと気付かれないよう、そして彼女が別人としての人生を歩めるよう、正二は姿を隠したのです。

うーん、理解はできますが、これは幸せな生活とは程遠いですよね。
アンジェリーナの望んだ人生とは、ずいぶん違うものとなってしまいましたね。

なぜ彼らがこんな辛い思いをしなければならないのか・・。
オートマータとの因縁だとはいえ、怒りをおさえられません!!


で、そんなエレオノールですが、彼女には2人の人物の記憶が流れ込んでいたのです。
生命の水に溶けたのは、フランシーヌ人形と、彼女の髪の毛の持ち主ーフランシーヌと、2人いたのです!!

これ、すごく重要ですよね!!
エレオノールは、2人の記憶しか持っていないのですよ。
彼女だけ、白銀の記憶を持っていないのです。

つまり彼女は、「しろがね」の使命に囚われていない唯一の人物なのです!
これ、何気にすごいことだと思います。



さて、2人の記憶に囚われ始めた彼女を危惧したギイは、彼女を連れて旅に出ることを決意します。
隠すのではなく、「しろがね」として育てようと考えたのです。

アンジェリーナと正二の子としてではなく、ゾナハ病で苦しんで「しろがね」になった子として、ギイは彼女を育てます。

2人の旅には、こんな意味があったのですね。

その根底にあるのは、ギイとアンジェリーナの約束、そしてギイのエレオノールへの愛情でしょう。
彼がどんな思いでエレオノールと生活し、その成長を見てきたのか・・
なんだか胸が苦しくなりますね。

残された男2人が、1人の子供のために人生を捧ぐ姿は、心に来るものがあります。
そこにアンジェリーナがいないのが、なんとも悲しいですよね。

エレオノールの運命も辛いものですが、それを見守る2人の人生もどれだけ辛く苦しかったか・・。
やっぱり「しろがね」は皆、何かしらの傷を負っているのですね。
つい最近まで幸せにしていたことを思うと、なんとも言えない思いです・・。



そして順調に計画は進み、エレオノールはルシールたちの訓練を受け、「しろがね」として一人前となります。
そこで、ようやく正二は彼女を迎えに行くのです。

理由をつけ、日本へ彼女を呼び寄せようとする正二。
それは、長い計画の終わりを示すものでした。

「しろがね」の任務として彼女を正二のもとに置けば、もう誰にも怪しまれることはなく、2人は一緒にいられるようになるのです。

その間、なんと50年!!
長期にわたり、2人は仲間を欺き、計画を遂行させたのですー!


が、これでようやく幸せが訪れると思いきや、それもまた叶わないのですよ。
現代ー
そこで何が起きたか詳しいことはまだ分かりませんが、私たちは貞義が動いたことを知っています。

貞義ーディーンが、アンジェリーナの死後どんな動きを見せていたのか・・。
そしてここに、勝がどう絡んでくるのか・・


まだまだ記憶を辿る旅は、終わりそうにないですね。







さて、次回はいよいよ貞義が出てきそうですね。
フランスへ戻った彼が、その後どうしていたのか。

そして、どうしてまた日本に来て、貞義としてサイガにいたのかー
早く答え合わせをしたいですね!

次回も楽しみです☆