前回、人体錬成という罪を犯した代償をロゼに見せたエドとアル。
彼らの戦いにより、レト教の不義は住人たちの前にさらされ、町は救われました。

一方企みを全て暴かれ、行き場を失ったコーネル。
そんな彼の前には、彼に賢者の石の偽物を託した謎の男女が現れて・・?!

新たな町での、旅が始まります!
感想です☆





第3話~ 「炭鉱の街」





※以下、ネタバレあり※











◎あらすじ◎

新たな街へ向かう列車ー
その中には、ほとんど客の姿はなかった。

これから向かう街は観光地でもないからこんなものかー・・。
エドとアルは顔を見合わせ、地図を確かめる。

彼らがこれから向かう街は、東の終わりの街と呼ばれていた。
ユースウェル炭鉱という、炭鉱のふもとの街だー。

ようやく到着し降り立つと、街は閑散としていた。
もう少し活気があるものかと思ってたが・・。
思わずエドが息を呑むと、皆疲れてるみたいだ・・とアルも周囲を見回す。

と、そこに1人の少年が通りかかった。
彼は2人を見るなり駆け寄ってきて、今日の宿はあるか?と尋ねる。
その勢いに圧されている内に、少年は父親に声をかけに行ってしまう。
エドたちの姿を見た父親も、宿を探していると聞いてにっと笑みを浮かべるのだった。


ーその親子は、昼間は炭鉱で、そして夜は宿場を経営して二足の草鞋で生活していた。
店は夜は炭鉱夫たちのたまり場になるようで、酒を飲む人たちでにぎわっていた。

そんな中、エドたちは1泊の料金に法外な金額を請求されて驚く。
だがこのさびれた街では、旅行客は貴重な収入源だ。
父親はびた一文まけないぞーと鼻を鳴らす。

だがエドたちには、1泊分の資金もなかった。
金でも錬成するか?と悪に手を染めるか話し合う2人の声を聞きつけた少年は、彼らの話に耳を澄ます。
そして父親たちに、告げ口をした。

この人たち、錬金術師だ!!

ーその途端、男たちの瞳が光った。
彼らは次々にボロボロになった工具を持ってきて、エドたちに錬成を頼む。
彼らもそれを快く引き受け、店は一気ににぎわった。

父親も気を良くし、宿代を少しまけようーと笑う。
彼は食事を用意しながら、2人に名前を聞いた。
そこでエドは、早速自身の名を名乗るー

すると父親の表情が、さっと変わった。
・・国家錬金術師の?
彼がそう尋ねると、周りの男たちの視線もエドの方を向くー

不穏な空気を察しながらもエドがうなづくと、その瞬間父親は食事の皿を下げた。
そして有無も言わさないまま、2人を宿の外へと追い出すのだった・・。

どうやら国家錬金術師を、軍の犬だと彼らは認識しているらしい。
アルだけは資格を持っていないということで許されたが、エドは宿がないまま一晩を明かすことになるのだった。


宿に戻ったアルは、男たちが口々に軍人の悪口を言うのを聞いた。
少年によれば、ここを統括している軍人のヨキという中尉が金の亡者なのだという。

彼は中央の高官に賄賂を贈るために、経営していた炭鉱を売った。
そのためこのユースウェル炭鉱で働く人間の給料は、雀の涙ほどになってしまったのだ・・。
高官とヨキが賄賂でつながっているため、訴えても無視されてしまうのだーと男たちは憤る。

それに加えて、国家錬金術師だー。
父親が言い捨てる。
数々の特権と引き換えに、軍事国家に魂を売るような奴を、自分は許すことができないーと・・。

ーその頃、エドは1人道端に空腹で突っ伏していた。
そこに、店からこっそり食糧を持ってきたアルがやってくる。
彼にこの街の事情を聞きながら、エドは1キレのパンを味わった・・。

どこにでもいるような役人の話だが、彼のせいで十分な食糧も回ってこないらしい・・。
アルの言葉に、エドは息をつく。
そのせいで、自分たちもいい迷惑だなーと。

彼も国家錬金術師となる時から、ある程度の非難を受けることは覚悟していた。
だが、ここまで嫌われているとなると・・。
そう苦笑する兄に、アルはぽつんと呟く。
僕も、国歌錬金術師になろうかなー・・。

けれどもエドは、その言葉を笑い飛ばした。
やめとけ、針のむしろに座るのは自分1人で十分だ。
軍の犬に成り下がり、おまけに禁忌を犯してこんな体になってしまったー・・。

そこまで言うと、2人はかつての師匠を思い出して身震いする。
こんな姿、師匠に見られたら殺されるー!!

と、そこに何やらバタバタと人がやってくる足音がした。
2人が顔を上げると、男たちが3人宿場へと入っていくのが見えたー。

それはヨキと、彼に従う部下たちだった。
彼らは店の中を見回すと、父親ーホーリングに声をかける。
最近税金を滞納しているようだな・・と。

そこでホーリングは、稼ぎが少ないから・・と答える。
するとヨキは男たちを睨み、酒を飲む余裕があるならもう少し給料を減らしても構わないな・・と一笑した。

その言葉にかっとなった少年ーカヤルは、ヨキに雑巾を投げつける。
だが彼の抵抗はすぐに部下たちに取り押さえられ、カヤルは暴行を受ける。
ホーリングは急いで止めに入ろうとしたが、部下の1人が剣を抜き取った。
皆が息を呑む中ーその剣は、真っ二つに割れた。

ー?!
驚く一行の前に現れたのは、エドだった。
彼は錬金術で剣を砕いたのだー。

ヨキたちは思わず取り乱すが、彼らはエドが持っていた国家錬金術師の資格を表す銀時計を見て更に慌てる。
国家錬金術師といえば、大総統府直轄の機関だ。
ヨキはすぐに、エドに取り繕うことにした。

この少年に好印象を与えておけば、中央にコネを作れるかもしれないー。
彼はすぐさまエドにへつらい、宿場より数段立派な宿泊施設に案内する、と揉み手をした。
エドもこの宿には泊めてくれないようだから、と上機嫌でそれについていく・・。

そうして出ていったヨキとエドに戸惑いながらも、店の男たちは皆苛立ちを隠せないのだったー。


ヨキに案内された宿泊施設で、エドは好待遇のもてなしを受けた。
街はあんな状態なのに、随分良いものを食べているようだー。
エドが呟くと、ヨキは税金の徴収も上手くいっていなくて・・と大げさなため息をついた。

納税の義務を怠りながら、権利ばかり主張するという訳か・・。
エドがうなづくと、ヨキはぱあっと顔を明るくする。
この世の理は全て、錬金術の基本である等価交換で表すことができる。義務あっての権利だー。
エドがそう語るのを、ヨキは首を縦に振りながら聞き入る。

なるほど、素晴らしい。ということは、これも受け取っていただけますかなー?
彼はそう言うと、部下にある物を用意させた。

それはー賄賂だった。
袋に入ったそれを手にしたエドに、ヨキはこれは気持ちだーと笑みを浮かべる。
私は一生をこんな田舎の小役人で終わりたくはないのだ。分かっていただけますでしょう・・?

そう含んだ瞳を見せるヨキから、エドは袋を受け取った。
こうして食事会は終わり、エドは部屋で休むことにする。

建物を出たヨキの元へ、部下が駆け寄った。
彼がホーリングの店で不穏分子が集まって不平を高めていることを知らせると、ヨキはふん、と鼻を鳴らした。
前から何かと反抗的な奴らだったなー・・。
彼は部下に一言告げる。

焼き払え。


ー翌朝、ホーリングの店は跡形もなく燃え散っていた。
街の人間は皆言葉をなくし、地面にうずくまるホーリング親子の姿を見つめる。
エドもその姿を、じっと見据えた。

昨晩、ヨキの部下が店の周りをうろついていた、という目撃情報が上がる。
汚いことをしやがるー!!
街の人間たちは怒りに震えたが、権力の前にどうすることもできずにいた・・。

そんな中カヤルは、エドとアルに言った。
国歌錬金術師なら、黄金を錬成するくらいできるだろう?ぱっと出して、父親の店を助けてくれーと。

だがエドは、きっぱりと首を振った。
錬金術の基本は、等価交換だ。お前たちに金をくれてやる義理も義務も、自分たちにはないー。

そう突き放されたカヤルは、思わずエドの胸倉を掴む。
それでも錬金術師かー?!
そう問われたエドは、真っすぐにカヤルを見返す。
錬金術師よ、大志のためにあれーか?

彼はカヤルの腕を振り払うと、どうせここで金を出してもまた役人に奪われて終わりだ、と話した。
その場しのぎで、錬金術を使われてはたまらない。嫌ならこの街を出ていくことだー。
そう言うと、ホーリングがぼそっと口を開いた。

小僧、お前らにゃ分からんだろうけどな・・、炭鉱が俺たちの家で棺桶よー。
彼はそれだけ告げると、妻と子の肩を抱いて2人に背を向けるのだった・・。


その後、エドは1人炭鉱の方へと向かった。
後ろを追いかけながらアルは、街の人たちをどうにか救えないだろうか?とエドに声をかける。

するとーエドはアルに問いかけた。
目の前にあるボタ石を全部金に変えたら、どのくらいあるだろうかーと。

それを聞いたアルは、エドのしようとしていることに気付く目を見開く。
エドはバレなきゃいいんだよーと笑うと、早速手を打ち合わせる。
彼が錬成をする姿を眺めながら、アルは悪い兄を持つと苦労する・・と苦笑するのだった。

そしてー錬成を終えると、2人はありったけの金塊を持ってヨキの元へと向かった。
面食らう彼らに、エドは交渉を持ちかける。
この金塊と引き換えに、炭鉱の経営権を丸ごと売ってほしいーと。

その金塊の量に、ヨキと部下たちは目の色を変えた。
ヨキは2つ返事でうなづき、早速炭鉱の権利書を取り出す。
そんな彼にエドは、中央の役人にも話をしておくから・・と更に甘い言葉を持ちかける。

ヨキはもはや、有頂天だった。
エドはその表情を見て、彼に念書を書いてほしい・・と耳打ちする。
金の錬成は違法だから、一応経営権は無性で穏便に譲渡した旨記してくれー
そう言われたヨキは、それも快く了承する。

2人は手を取り合い、裏取引の成立にほくそ笑むのだったー。


一方街では、男たちの意見が二分していた。
今回の件でヨキに殴り込みをかけようと意気込む人々と、それは駄目だと首を振るホーリング。
皆を犯罪者にしたくないー
その気持ちは伝わるが、皆納得できずに地団駄を踏む・・。

そこに、呑気な様子のエドとアルが入ってきたので、皆うんざりした顔で彼らを迎えた。
何をしに来たー
そう問われたエドは、得意そうに炭鉱の権利書をホーリングたちに見せびらかす。

その書類の名義がエドワード・エルリックになっていることに気付いた人々は驚愕する。
そんな一行に、エドは本題を持ちかけた。
この権利書を、買わないかーと。

それを聞いたホーリングは、いくらだ・・?と息を呑む。
高いよー?
エドはにっと笑い、ホーリングのところで1泊2食2人分の料金ってところかなーと歯を見せる、
その意味に気付いた一行は、今度こそ目を見開いた。

・・等価交換!!
カヤルが思わず叫ぶなか、ホーリングはテーブルを叩いた。
買った!!
売った!!

エドとホーリングは互いに笑い合う。
場も一気に盛り上がり、人々は活気を取り戻すー。
そこに、ヨキとその部下たちが飛び込んできた。

彼らは慌てた様子で、エドにもらった金塊が石ころになってしまったと騒いだ。
だがエドは、何のことか?ととぼける。
ヨキの主張を証明するものは何もない。無償で炭鉱を譲り受けたという念書だってあるのだ。

そのことを指摘されたヨキは、ホーリングたちに炭鉱の権利書を返すように主張する。
だがそんな彼の前には、炭鉱で働く屈強な体の男たちが次々に立ちはだかった。
彼らは日ごろの恨みを全てこめて、ヨキたちに拳を向けるー

ーその腕力の前には、役人たちはあまりに無能だった。
ボコボコにされた3人が床に倒れるのを見ながら、エドはヨキにとどめを刺す。
中尉の無能っぷりは、上の方にきちんと話を通しておきますんで!

それが、勝利の合図だった。
エドとホーリングは拳を打ち合わせ、圧政に勝ったことを祝う。
彼らはそのまま夜中まで、酒宴に興じるのだった。

そんなエドの姿を見ながら、カヤルはそっとホーリングに耳打ちする。
親父・・エドは魂まで売っちゃいなかったよ。
その言葉に、ホーリングも優しい笑みでうなづくのだった・・。




















炭鉱の街の出来事。


今回は降り立った街で、エドとアルが炭鉱夫たちの生活を救う話でした。
1話完結の短い話でしたが、エドとアルの人間性がよく表れていて、導入にはちょうどいい話でしたね。
スカッとする終わりも良かったです(^^)

また物語の世界観も、少し分かってきたような気がします。
エドたちがどんな世界で生きているのか、ここは結構大事な部分なのかもしれないなーと思いました。




ということで、まずは国家錬金術師という制度から。
これはエドだけが登録されていて、アルは普通の錬金術師なんですよね。
アルは能力の問題か年齢の問題か、エドに反対されているのが大きいのか・・国家錬金術師を目指しているということも特になさそうです。

ただ兄に引け目は感じているようですね。
でも国家に所属するからにはアルの体じゃ少し無理そうですよね・・。ちゃんと身体検査とかしそうだし。
諸々を考えて、エドだけが国家錬金術師になるという選択をしたのでしょう。


で、この国家錬金術師ですが・・一般人の評判は芳しくないようですね。
国家の犬と見られてしまうのかー・・。
まぁ国の政局が不安定だったりすると、そこに所属する者も厳しく見られがちですよね。

実際国家錬金術師の仕事がどういうものなのかは分かりませんが、国家から直接命を受けて働くのなら、そう取られても仕方ない面はあるのかも。
エドもそこは否定せず、甘んじて批判を受け入れている感じですし。。
なかなか複雑な事情がありそうです。

この辺は今後のエドたちの動きや、他にも国家錬金術師が出てきたら徐々に明らかとなりそうです。
せっかく稀有な能力なのだから、重宝されているとばかり思っていたので、今回の展開は少しびっくりでした。

でも国家錬金術師だけが冷たい対応を取られるのは、現実っぽくてさもありなんですよね。
その辺リアルで上手いなぁとも感じました。

鋼の錬金術師と呼ばれるからには、他の国家錬金術師たちにも名前があるのでしょうね。
どんな能力の人たちが今後出てくるのかも、楽しみになりました。






さて、もう1つ気になったのは、街の人たちのこと。
前回の街といい、今回のユースウェル炭鉱といい、人々の生活はあまり豊かなものではなさそうでしたよね。
これも前述した国家錬金術師の冷遇につながる話だと思うのですが、恐らく国の情勢自体が現在良くないのでしょう。。

だから役人が偉そうにはびこり、人々は宗教にすがってしまったり、生活苦を嘆いたりするのでしょう・・。
2つの街の事例を見て、そういう空気を感じました。

これは政府が腐っているということなのかなぁ。
それともまだ出てこないけど、戦乱の真っただ中だったりするのかもしれませんね。
いずれにしろ、人々の不満や不安は高まっている状態なのでしょう。

エドたちがその問題に関わるかは分かりませんが、国家錬金術師である彼らへの風当たりが強いのはこの問題が一端となっていると思われます。
せっかくエドたちのように錬金術で人々を救おうとする人間もいるのに、それでは報われませんね・・。

きっと、本当に国家の犬となって甘い汁を吸っている国家錬金術師もいるのでしょう。
しかしそういう人ばかりだーと一括りにはせず、彼らの本質を見てほしいところですね。
まぁ今回のようなやり取りがない限り、国中にエドたちの功績を伝えるなんて無理な話ではある訳ですが・・。

でもなんだかまだ子どもであるエドたちが言われない中傷や冷遇を受けるのは、もやっとするものがあります。
他人には、人の本質なんて早々見えないということなのでしょう・・。


これから色んな街を旅することで、エドたちの評判が少しずつ戻っていくといいですね。
彼らは罪を犯した者ではありますが、それを反省し乗り越えようと頑張っています。
そんな彼らの姿を、もっと色んな人に知ってもらいたいなー
そう感じた、今回の話でした。







さて、次回はまた新たな街での話でしょうか。
しばらくはこのスタイルで行くのでしょうかね。
その間に、彼らのいる国の状況などがもっと明らかになっていくのでしょう。

後は前回出てきた敵が、また現れるのかも気になりますね。
賢者の石を無効が持っている限り、いずれぶつかるのは必至です。
人間とは思えない彼らの正体ー早く知りたいものです。

次の街では、どんな事件が起きるのかー

次回も楽しみです☆