前回、イズミの元での厳しい修行を終え、リゼンブールに戻ったエドとアル。
2人はついに、悲願である母親の人体錬成を行います。

しかし結果は、アルを持っていかれ、エドは手足を失うことに・・。

そこで真理を見たエド。
この告白を前に、イズミは何を語るのでしょうかー?

感想です☆




第24話~ 「鋼の錬金術師」




※以下、ネタバレあり※









◎あらすじ◎

ーリゼンブール。
初めてこの村を訪れたマスタングは、駐在にエルリック兄弟の家への道を案内してもらった。

彼はエルリック兄弟の錬金術の腕前の噂を聞き、国家錬金術師にならないか勧誘に来ていた。
国は今内乱が多発して人員不足のため、東方司令部の彼が出向く羽目になったのだ。
事情を聞いた駐在は、さぞ子どもたちもびっくりするだろうーと笑い声をあげる。

その言葉に、マスタングは眉を動かした。
子ども・・?
どうやら彼が預かった書類は人手不足が祟ったのか、年齢が間違っていたようだ・・。

まぁ会うだけ会ってみようー。
マスタングはため息をつきながらも、付き添いで来たホークアイと共に村のはずれのエルリック兄弟の家へとそのまま向かったのだった。

ー家に着くと、中には人がいないようだった。
留守だろうか・・。
マスタングは家の鍵が開いているのに気づくと、そっと中の様子を窺う。

家の中には様々な錬金術の書籍と勉強した跡、そして写真などが散見された。
マスタングはそれらを眺めながら更に中に入り・・そして続きの部屋を見て、ぎくっと足を止めた。

その部屋には、大きな錬成陣と血だまりがあった。
転がっている薬品を見た彼の表情が、みるみるうちに硬くなるー。
マスタングはすぐに駐在を呼び、兄弟がいそうな場所を教えるように告げるのだった。

ー駐在によれば、エルリック兄弟は隣のロックベル家と親しくしているらしい。
話を聞いたマスタングたちはすぐに向かい、ピナコが出てくると半ば強引に家へと上がり込んだ。

マスタングはきょろきょろと、エルリック兄弟の姿を探す。
すると部屋の奥にー車いすに乗った少年と、鎧をまとった男性の姿があった。
少年の死んだような瞳を見たマスタングは、思わず駆け寄りその胸倉を掴んだ。

家に行ったが、あの有様は何だ?!何を作った?!
そう問われたエドは、悲し気な表情で目をそらす。
そして唇を震わせ、涙をこぼした。

その間に、アルが入る。
彼はマスタングの手を押さえると、ごめんなさいと何度も謝った。
ごめんなさい。許してください。
その悲痛な声色に、マスタングはエドから手を放すのだった・・。


その後、マスタングはエドたちに国家錬金術師の資格について説明を行った。
国家錬金術師になれば、高額な研究費用の支給、特殊文献の閲覧、国の研究施設などを使用することができるー。
軍に絶対服従の身にはなるものの、エルリック兄弟が国家錬金術師になるメリットは大きい。
彼はそう考え、2人に詳細を語った。

元の体に戻る方法に関しての研究も、ここにいるよりは多様な手段を探れるだろうー。
そのマスタングの提案を聞いたピナコは、2人には国家錬金術師になれる素養があるのか?と問うた。

マスタングはうなづき、エルリック家に残された人体錬成の錬成陣と過程だけ見ても十分だし、何よりも魂を鎧に定着させた業は素晴らしいと答える。
するとピナコは表情を険しくし、エドをじっと見据えた。

・・マスタング大佐、エドが血まみれでこの家に駆けこんできたときに、私は2人の家に行ったんだ。
ピナコは口を開き、あの日の顛末を語り出した。
「あれ」は、家の裏に埋葬したよ・・。

そう言うと、彼女は唇を噛んで震えた。
「あれ」は人間なんかじゃなかった。錬金術っていうのは、あんな恐ろしいものを作り出す技術なのかい?!
あんたは・・2人をそっちの道に引きずりこもうって言うのかい?!

ピナコの叫びに、一同は沈黙する。
そのやり取りを、ホークアイは別室で待ちながら聞いていた・・。

そこに、ウインリィがお茶を持ってやってくる。
ホークアイがお茶を受け取ると、ウインリィはそのまま彼女の隣に座った。
そして・・しばらくためらっていたが、ホークアイに問いかけた。

あなたも・・人を撃ったことがあるの?

その問いに一瞬詰まった後、ホークアイはある、とうなづいた。
ウインリィはふっと目を逸らし、自分は軍人は嫌いだ・・と話した。

彼女は両親を戦争で亡くしていた。その上、マスタングはエドとアルを連れていこうとしているー。
2人を連れていかないで・・。
ウインリィはか細い声で、そう懇願した。

それに対しホークアイは、連れていく訳ではない、あの子たちが自分の意志で決めることだーと淡々と返す。
それから彼女は、まぁ自分も軍人は好きではないけどね・・と苦笑した。

じゃあ何で軍にいるの?
ウインリィは不思議そうに、尋ねる。
ホークアイは真っすぐに前を見据え、ただ一言答えた。
守るべき人がいるからー。

ー一方マスタングは、ピナコの訴えに対して答えようとしていた。
自分はエドたちに強制している訳ではない。ただ可能性を提示するだけだーと。

このまま鎧の弟と共に、一生を絶望で終えるか。それとも元に戻る可能性を求めて、軍に頭を垂れるかー。
決めるのは君たちだ・・。
彼はそれだけ言うと、席を立つのだった。

マスタングが出てきたので、ホークアイも立ち上がった。
ウインリィと彼女は握手を交わし、別れる。

帰り道、ホークアイはマスタングに、エルリック兄弟は来るだろうかーと尋ねた。
それに対しマスタングは、来るさ、と自信ありげに答える。

彼には、エドの瞳に焔が灯ったのが見えていた。
エドの目は、決して絶望に打ちひしがれている訳ではない。
あれはー可能性に賭ける目だ!!

ーその頃、エドはピナコに相談を持ち掛けていた。
彼の意志を聞いたピナコは後悔しないかと訊くが、エドはもう決めたーと首を振る。

エドが知りたかったのは、オートメイルを装着したらどれくらいで動けるようになるのか、ということだった。
ピナコはまともに動けるようになるまでには、手術とリハビリを含めて3年くらいだろう・・と算段する。
するとエドはにっと笑い、言った。

だったら、一年だー!!

その覚悟に、他の3人は息を呑んだ。
血反吐を吐くことになるよ・・。
そう警告するピナコに応えると、エドはアルを見つめた。

アル、もう少し我慢してくれな。俺が元の体に戻してやる。
兄の言葉に、アルもまた力強くうなづいた。
うん、その時は兄さんの体も一緒だよー


それからのエドは、辛い手術とリハビリに必死に耐えた。
鍛錬も欠かさず、彼はアルと手合わせをすることで手足の感覚を磨いていった。

そんな2人を見ながらウインリィもまた、元の体に戻るまでエドをサポートする、と決意していた。
そうして3人で協力し合いながら日々を過ごし、ついにエドはオートメイルの手で錬金術を使えるまでに回復していったのだった。

久しぶりの錬金術を試したエドは、両手を合わせるだけで錬成ができるようになっていた。
それを見たアルは驚き、師匠と同じことができるようになるなんて!と感嘆する。
・・アルはできないのか?
エドは不思議に思い、アルに「あれ」を見なかったのか?と尋ねる。

だがアルには、「あれ」が何か分からないらしい・・。
それを知ったエドは何か腑に落ちないものを感じながらも、納得するのだったー。

ーそして一年経ったある日。
エドは、中央に来ていた。

彼らが鍛錬を積む間に、マスタングは大佐になっていた。
エルリック兄弟を推薦した者として立ち会ったマスタングは、国家錬金術師の試験をするためにエドを会場へと連れていく。

その日は12歳の少年が試験に挑戦すると聞いて、ブラッドレイもまた会場に赴いていた。
彼は会場に入り一目エドを見ると、ほお・・と眉を上げた。

鋼の義手か・・。

エドは東部の内乱で怪我をした・・と偽る。
ブラッドレイもそれ以上は聞かず、早速試験は始まることとなった。
軍の人間たちが見守るなか、エドは錬金術の腕前を披露するよう求められる。

そこで彼はすぐに、両手をぱん、と合わせた。
そしてその手を床にかざし、槍の錬成を始めるー。

何も道具を使わないその錬成に、ブラッドレイもマスタングも皆目を見張った。
更にエドの錬金術の確かな腕前を見た一行は、子供とは思えないような腕前に言葉を失った・・。

するとエドは槍を掴むと、一直線にブラッドレイに向かっていった。
突然の謀反に軍人たちは驚き、立ち上がる。
だがエドはーその槍を、ブラッドレイの首筋すれすれで止めた。

2人は瞬きもせず、にらみ合う。
やがてエドは槍を引くと、こういうことも起こり得るから試験方法は見直したほうがいいんじゃないか?と話した。
ブラッドレイもそうだな、と何度もうなづく。

当然エドのしたことは、軍人たちにこっぴどく注意されることとなった。
危うく不合格にされそうになり、エドは慌てる。
けれどもブラッドレイはエドの肝が据わった部分をほめ、結果を待つようにーと述べた。

だがまだ世界を知らぬな・・。
そう言うと、ブラッドレイは笑って会場を去っていった。
その笑いを不思議に思ったエドは、槍の先を見て息を呑む。

いつのまに切ったのか・・槍は、先端がすっぱりと切り落とされていたのだー。
エドはブラッドレイの底の深さを感じ、恐れ入るのだった・・。

ーその後、エドはマスタングと共に会場を後にした。
マスタングは面白い見世物だったが、国家錬金術師になったら軍属の身だ、今後は気を付けるようにーと警告する。

だがエドは、そう語るマスタングもまた、気を付けた方がいい・・とさっきのことを思い返した。
ブラッドレイに切りかかったとき、他の軍人たちは皆急いで席を立った。
けれどもマスタングだけは、微動だにせずその成り行きを見ていたのだ・・。

とても忠誠心が厚いとは言えないなー。
彼はマスタングの中に、野心が潜んでいることをその時知ったのだった。

そのことを指摘すると、マスタングは苦笑した。
と同時に、首根っこを掴まれているのはエドもまた同じだーと告げる。

国家錬金術師は、「人を作るべからず」「金を作るべからず」「軍に忠誠を誓うべし」という3大制限がある。
エドたちの人体錬成が軍にバレたらエドはただでは済まないし、アルは貴重な錬成の例として研究室送りになるかもしれないー。

エドが自分の野心を黙っていてくれるなら、自分も人体錬成の件は黙っておこう。
それが互いにとって、一番賢い選択だー
したり顔で笑みを浮かべるマスタングに、エドは何も言い返すことができない。

ーこうして2人は密約を交わし、エドの試験の結果が出るのを待つのだった。


そしてー一週間後。
エドは、マスタングの執務室にいた。

マスタングは彼に、国家錬金術師の証である銀時計を渡す。
エドは無事、試験に合格したのだった。

もちろん彼の年齢を懸念し、反対する声もあった。
だがエドの錬金術の腕前は、頭1つ飛びぬけているといっても過言ではない。
よそに行かれるより、軍に縛り付けておいた方がいいだろうー。
それが軍部の判断だった。

規則などを説明しながら、マスタングはブラッドレイが定めた国家錬金術師の二つ名を告示しようと書類をめくった。
そこに書かれた名にマスタングは眉を上げ、なかなか皮肉な銘をよこすものだ・・と息をつく。

エドもまた書類を受け取り、そこに記された名を読み上げた。
国家によって背負わされるその名前ー
それは「鋼の錬金術師」だった。

その響きに、エドはにっと笑みを浮かべる。
いいね、その重苦しい感じー!
彼は体を取り戻すというその使命を胸に、二つ名を背負うことを誓うのだった。




















鋼の錬金術師の誕生。

今回はエドが国家錬金術師となるまでの話でした。
いよいよ全ての過去が明らかになりましたね!
エドがどんな思いで国家錬金術師となり、鋼の錬金術師を名乗ることになったのかが詳細に描かれていて、とても興味深かったです。

マスタングとは、ここからの付き合いなんですね。
エドも生意気だとは思うけど、マスタングもなんだかんだ意地悪なので、2人は息が合うなぁと感じましたw
アルだったら、こういう関係にはならなかっただろうなぁ。

どうしてマスタングが2人の秘密を知っているのかも、こういう事情があったからなのですね。
ある意味マスタングがいなければ、エドたちは今も絶望の底でもがいていたのかもしれないと思うと、彼は救世主なのかもなぁ。

でも周りの大人の反応も分かります。
国家錬金術師は軍属が決まっていて、戦争にも容赦なく駆り出されます。
内乱が多発している今、エドたちがすぐに戦場に出向く可能性だって大きいのです。

そうなるかもしれないと思ったら、エドとアルのことを大切に思う人たちは反対しますよ。
ピナコやウインリィの思いは痛いほどよく分かるし、イズミがエドが国家錬金術師になったのをよく思わなかった理由もうなづけます。

けれどもエドは、自分の意志で国家錬金術師となることを決めたー。
皆が自分たちを心配していることも分かっていて、いばらの道を選んだ。
それが、彼の覚悟ということなのでしょう。

それほどまでに、エドはアルの体を失ったことに責任を感じていたのだと思うと、本当胸がつぶれますね。
ものすごく辛かっただろう手術とリハビリを乗り越え、錬金術師としての腕も磨くー
並大抵の努力ではなかったことは容易に想像がつきます。

だからウインリィもホークアイの前では戦争に行くことを心配していたけれど、最終的にはエドのサポートをしようと決めたのでしょうね。
一番近くにいたからこそ、ウインリィやピナコはエドたちの思いを尊重し、見守ることを選んだのだと思うと、またそれも泣ける・・。
両親を戦争で亡くしたのだから、本当はどれだけ苦しかったことでしょう・・。

皆が側にいて導いてくれたから、今のエドとアルがあるんですね。
改めて彼らが人に恵まれていることもよく分かった回でした。
そして何より、エドの体を取り戻すことへの思いの大きさがすごくよく伝わってきた・・。

本当に、彼が早くその呪縛から逃れられる日が来るといいですね。
その時には、エドは国家錬金術師の資格を返上するのかな?
常に1つの目標を追って、錬金術の腕を磨いてきたエドー

彼の未来がどうなるのか、ますます楽しみだなと感じました。




さて、後は気になったことを少々。
まずは、初めてスポットが当たったともいえるホークアイについて。

彼女がこんなに長々と話しているのは初めてでしたが、子供のウインリィにもしっかりと語るその姿には好感が持てました。
さすがマスタングが側に置くだけある。信頼のできる人ですね。

彼女がマスタングに付き従うのも、信念がしっかりあってのことでした。
マスタングを守りたいー
その一念が、彼女を動かしているのですね。

戦場にも出向いていたことがあるようですし、もしかしたらホークアイもまたイシュヴァ―ルの内乱の経験者なのかもしれないですね。
戦争が人の心を変え、人の心に進むべき道を見せた。
戦火の中で、マスタングと何かあったのかなーとか個人的には感じました。その因縁が、彼女がマスタングを慕う理由なのではないかなって。

その辺も、いずれは明かされるのでしょうか。楽しみですね(^^)
その前に、ホークアイも一緒に中央勤めになれるのかな?
マスタングと共に、今の軍部の腐敗を変えていけるといいですね。





で、後はブラッドレイについて。

2度目の登場ですが、やっぱり何か含みがありそうな人物に思えます。
多くは語らないし明るく見えるけど、そこは大総統。
腹に一物ありそうな感じがプンプンしますw

でも彼、嫌いではないなぁ。
なんだか愛らしい大人ですよね。
内乱が多発しているってことは、好感度はそんなに高くないのかな。結構魅力ある人物だとは思うんですけどねぇ。。

そういえば大総統は、錬金術は使えないのでしょうか。
軍部の中に、どれだけ国家錬金術師っているのでしょうね。
マスタングの部下にもヒューズの部下にも錬金術師はいなさそうだし、意外とレアなのでしょうか。
まぁ試験をくぐっても、毎年監査もあるしなぁ・・なかなか厳しい資格なのかもしれないですね。

彼のことも、もっと深堀してほしいなぁ・・と思います。なぜかめっちゃ気になる。
きっと今後深く関わってくる人物ですよね。
マスタングは軍の頂点を狙っているし、イシュヴァ―ルの内乱の話だって出てくるだろうし。

トップに立つ人物なのだから、甘い感じだけの人ではないでしょう。
きっとまだ出てこないダークな部分や冷酷な部分も色々あるのだろうと思うと、どんな面が見られるのか楽しみになります。

彼が鋼の錬金術師の名付け親というのも、きっと何かの因縁ですよね。
今後の登場に期待してます!






さて、次回は過去編も終わり、現代に戻る感じでしょうか。
全てを聞いたイズミが、どんな反応をするのか怖いけど気になります・・。

教えを破ったのだから、当然厳しく怒られるでしょうね。
でも彼女もまた、恐らく人体錬成を行ったことがあるだろうと思われます。
そのことに、イズミは触れるのでしょうかー。

師弟の関係はどうなるのか。そしてエドたちはイズミから、体を取り戻す手がかりを掴むことができるのかー。

次回も楽しみです☆