前回、人柱を作るために人体錬成を迫られるマスタング。
それを拒む彼の前には、ついにブラッドレイとセリムが現れます。

ついに日蝕が始まるなか、無理やり扉を開けさせられようとするマスタング。
このまま彼はホムンクルスの計画に呑み込まれてしまうのでしょうかー?!

感想です☆




第102話~ 「扉の前」





※以下、ネタバレあり※










◎あらすじ◎

この手は余り使いたくなかったのですが、仕方がない・・。

ブラッドレイとセリムは、人体錬成の準備を進めた。
時間のない今、もはやマスタングの意志などどうでも良かった。
共生的に扉を開かせてもらうー
ブラッドレイはマスタングに、そう説明した。

人体錬成術は、セリムが老医師を取り込んだことで、彼の中に知識として蓄えられていた。
そのセリムの影が、マスタングの身体を縛り付けるー。
こうして、人体錬成の準備は整ってしまった。

錬成陣の輪を抜けながら、ブラッドレイはマスタングに声をかける。
さて、君はどこを持っていかれるかな・・。

その瞬間、錬成が始まった。
光が沸き起こり、マスタングを包み込んでいく。
ホークアイたちは止めようとしたが、巻き込まれてしまうため手が出せなかった。

そのまま、錬成は行われてしまった。
激しい衝撃と共に、光が弾ける。
そうして辺りは静けさに包まれたー。

錬成が終わった・・?
一行が錬成陣を見やると、そこには醜い姿となった老医師の姿があった。
マスタングの姿は、そこには見受けられない・・。

するとブラッドレイが、マスタングはお父様の元へ行った、と話した。
それから彼は残った一行の方へ向き、2本の剣を引き抜く・・。
その身体の傷はまだ再生せず、血が滴り落ちていた。

私は御覧の通りのあり様だー。
彼はそれを皆に見せながら、1人1人の顔を見回す。
討ち取って名を上げるのは誰だ?キメラか?よそ者か?マスタングの犬か?それとも・・
全員でかかってくるか?

その眼差しの鋭さに、ダリウスは息を呑んだ。
ボロボロのおっさん1人なのに、全然勝てる気がしねぇ・・。、

その時、ジェルソが皆に囁いた。
さっきメイが「真下にいる」と言った時、老医師は慌てだした。どうやら邪魔をさせたくなかったようだった・・。

それを聞いたスカーは、眉を動かす。
つまり、自分たちにこの下に行ってほしくないということか・・。

彼は老医師がいた辺りを中心だと言っていたことも鑑み、拳を発動させる。
この下・・か。
その拳が、床を分解するー!!


その頃ー
マスタングは、真理の扉の前にいた。

戸惑う彼の背後に、真理が立つ。
その気配を感じて、マスタングは振り返ろうとした。
その瞬間、扉の眼が開くー。

ーそして気が付くと、マスタングはホムンクルスの元へ召喚されていた。
錬成陣から飛び出してきた彼の姿を見て、エドたちは驚く。
彼と共に現れたセリムが、ホムンクルスに5人目ですーとマスタングを紹介した。

ホムンクルスはうなづくが、まだアルフォンス・エルリックがここに来ていない・・と息をつく。
その間に、エドはマスタングの元へ駆けよった。

身体を打ったマスタングは、頭を押さえてうめき声を上げた。
彼はエドの声に気付き、何があったのかを話す。
真理の扉を開けたー
そう聞いたエドは驚愕し、身体のどこを持っていかれたのか?!とマスタングの身体を隅々眺めた。

するとマスタングはエドに、そこにいるのか?!と尋ねた。
すぐ側にいたエドは、その言葉に戸惑う。
だがマスタングは真面目な顔で、ここはどこだ、真っ暗で何も見えない・・と目を押さえた。

それを見たエドの背筋が、ぞわっと逆立った。
マスタングは何も見えない・・とまた呟く。
その姿に、エドもイズミも息を呑んだ。

まさか・・眼が見えないのか・・?!

そのやり取りを見ていたセリムが、面白そうに声をあげた。
彼はそれは好都合だ、と話す。マスタングの能力は、今の国家錬金術師の中では一番厄介なものだったからだ。

そこで打ちひしがれていなさい。
そう話すセリムの横で、ホムンクルスも笑う。
真理は残酷なものだ・・。

身の程をわきまえず亡き家族を蘇らせ、母の温もりを求めた者は、立ち上がるための足とただ1人の家族を持っていかれ、もう1人は温もりすら感じられぬ身体となった。
失くした子を求めれば、2度と子を与えられぬ身体となった。

そして・・国の先を見据えた者は視力を持っていかれ、その未来を見ることが叶わなくなった。
ホムンクルスは皆の顔を見回し、その眼を細める。
人間が思い上がらぬよう、正しい絶望を与える。それこそがお前たちが神とも呼ぶ存在・・真理だ!!


その頃ー
エドたちがいる真上では、床をスカーが砕いたところだった。

その穴から、メイやキメラたちはホムンクルスのいる場所へと降りていく。
そしてブラッドレイの元には・・スカー1人が残った。

父上の邪魔をするか・・。
ブラッドレイが呟く中、スカーは彼に攻め入る。
拳法で挑む彼を、ブラッドレイは剣で受け止めるー。

彼はスカーを見つめ、私の最期の相手は「破壊する者」か・・とうなづいた。
貴様、本当の名は何と言う?
そう問うブラッドレイに、スカーは答えた。
名は無い。捨てた・・。

するとブラッドレイは、それは奇遇だな・・と笑った。
私も己の本当の名を知らん。
彼は剣を構え、スカーもまた構えの姿勢を取った。

名無し同志殺し合うのも面白かろうー。
ブラッドレイの言葉を機に、2人は真正面からぶつかり合ったー


同刻、エドたちのいる地下には、今度はメイとキメラたちが降りてきていた。
メイは身軽に着地すると、目の前にいるホムンクルスを睨みつける。
外見は変わってますが・・その気配、不老不死の親玉さんですね?

ホムンクルスは天井を見上げ、大きく空いた穴を睨んだ。
それは落ちてくる際に、メイが開けた穴だった。
私の家に穴を開けるとは・・。
彼はそのまま視線をメイに移す。

一方メイは、床に転がるアルを見て目を見張った。
イズミから意識がないらしいと聞いた彼女は、心配そうにアルに呼び掛ける。
アルフォンス様起きて!アルフォンス様!!

・・アルは、今、真理の扉の前にいた。
そこで彼はー自分自身と対峙していたのだ。

アルは震えながら、目の前の人間の姿の自分自身を見つめ、歩み寄る。
身体・・僕の身体だ・・。
信じられないという思いと、やっと・・という思いが交差し、彼は腕を伸ばしながらもその場に膝から崩れ落ちた。

その腕に、人間のアルもまた手を伸ばす。
ずっと待ってた。
彼はそう言って、にこっとほほ笑む。
おかえりー。

だがその顔、その腕を見たアルは、自分の腕をぎゅっと掴んだ。
目の前の自分は、とても細く青白かった。
彼はそんな姿に愕然とし、これじゃダメだ・・と震える。

こんな身体で、今戦える訳がない!!!
そう叫ぶと、アルは床を拳で叩きつけた。
戻りたい。でも・・
彼は2つのせめぎ合う気持ちに折り合いがつけられず、頭を抱え苦悩した。

皆戦っているのに・・。

すると人間のアルが、僕と1つになるのが嫌なの?と不安げな表情で尋ねた。
そんな訳ないだろ!!
アルはすぐさまそう返した。

ずっと元の身体に戻ることを考えてきた。そのことだけを・・。それなのに・・。
彼は首を振った。
今はダメだ。そんな身体じゃダメなんだよ・・!!

それを見た人間のアルは、その身体であっちに戻りたい?と訊いた。
その後ろで扉が開き、黒い腕が伸びたー。

行くなら止めない・・。
その言葉と同時に、黒い無数の腕がアルの鎧の身体を掴もうとした。
アルはその腕の中に、自ら飛び込んでいく。
彼は扉の中に入りながら、人間のアルに呼び掛けた。

ごめん、また来るから!もう少し頑張ってて!!
必ず来るから!絶対約束するから!!

そう言って消えていくアルを、人間のアルは笑顔で見送った。
彼は、仲間を助けるために長年求めていた肉体を置いて行く自身のことを誇りに思っていた。
けれども・・

アルは閉まりゆく扉を見つめながら、1人呟く。
君が戻ることで、この世が絶望に満ちてしまうかもしれないんだよ・・、アルフォンス・・。

ー中央地下。
アルは真理の扉から、自身の鎧の身体へと戻ってきた。

彼が動いたのを見て、エドたちが急いで駆け寄る。
アルは息を吹き返したように飛び起きると、見慣れない場所に辺りをきょろきょろと見回した。
その姿が元気そうで、エドたちはほっと息をつく・・。

その姿をーホムンクルスは眼をかっ開いて見つめた。
彼はその顔を笑みでいっぱいにし、歓喜に叫んだ。
5人揃ったー!!!

それは、人柱が揃ったことを意味していた。
ついに、ホムンクルスの計画に必要な駒は全て揃ってしまったのだったー・・。




















真理の扉にて。


今回はマスタングが真理の扉を開いたことで視力を失うなか、ついに5人の人柱が揃ってしまう話でした。

マスタング・・!!
あまりの結末に、ショックです・・。
眼という予想は当たったけど、その奪われた理由が切なすぎる・・。

無理やり人体錬成をさせられたのに、未来を見る眼を奪われるなんて・・そんな理不尽なことがあっていいのでしょうか。
それが本当に真理なのか・・?!
違うだろう、という憤りしかありません。

これが許されるなら、神なんてやっぱりいないと言わざるを得ません。
なんとか取り戻す術はないのかな・・。
こんなのあんまりですよね。

ただ最終決戦の最中では、どうすることもできないでしょう。
となると、マスタングはやっぱりここで戦線離脱ということになるでしょうか。
残念だけど、今までよく戦ってくれました。ここは大人しく戦況を見守ってもらうより他なさそうです。

ホークアイもマスタングの眼の件を知ったら、ショックを受けるだろうなぁ。
彼女がマスタングの眼となることもできるでしょうが、マスタングはそれを望まないのではないかと思います。
それこそホークアイを縛り付けることになってしまいますからね・・。

きっとマスタングならこのハンデも乗り越えてくれるとは信じていますが、それでも難しいことも出てくるでしょう。
そんな時に頼りになるのは仲間。
誰か1人に頼るのではなく、今まで仲間となってくれた皆を頼り、協力し合いながらこの難局を越えていくのではないでしょうかー。

今はまだそんなことも考えられない状況でしょうが、どうかマスタングには意気消沈しないでもらいたいですね・・。
それにまだ、視力が戻る可能性だってあります!

エドたちが元の身体を取り戻そうとしているように、そしてその方法があるかもしれないのだから、まだ諦めるには早いと思うのです。
何かいい方法が見つかるはず・・!
そう思って、彼には前を向いてほしいですね。

国の先を見ようとすることの、何がいけないのでしょう。
マスタングは欲望のために、人体錬成を行った訳ではありません。
セリムに厄災が降りかかるならまだ分かるけど、やっぱりここは納得できない!!

だからきっと視力を取り戻せる方法だって見つかるはず!
時間はかかるかもしれませんが、それこそマスタングがシンと和親条約などを結べば、錬丹術との応用でとっかかりが見つかる可能性だって0ではありませんよね。

他にも、人間側にはマルコーだっているし、スカーの兄の錬金術の研究だって役に立つかもしれません。
彼らがここまで築き上げてきた絆があれば、突破口は見つかるー
今はそう信じたいです。

そのためにも、まずはホムンクルスたちを倒さなければなりませんね。
マスタングの思いを継いで、ここはエドたちに頑張ってほしいところ!
どうか明るい未来が拓けますように・・。



で、マスタングの人体錬成で気になったことがもう1つ。
それは、セリムが消耗していること。

冒頭、彼は本当はこの手は使いたくなかった・・と言っていました。
それって、今回のマスタングの人体錬成がホムンクルス側にとって都合が悪いものだったということではないでしょうか。

マスタングは最後まで、人体錬成を拒否しました。
そのためセリムは老医師を呑み込み、人体錬成の儀式を行うことになりました。

人体錬成の陣を開いただけなのかもしれませんが、それだって倫理に反すること。
もしかしたらセリムの身体にも、何らかのリバウンドが起きたのかもしれないですね・・。

彼の身体が崩れかけているのが、今回の話では読み取れました。
となれば、今が彼を倒す最大のチャンスだとも言えます。

戦うのは、ここにいるメンバーで考えると、エドたち、イズミ、メイの誰かになるのかな。
エドたちは人柱だということを考慮すると、メイが一番可能性が高いでしょうか。

メイは身体能力も高いし、何よりホムンクルスの業を破る力もあります。
これはセリムにも同様に効くものだと考えられます。

対して、どうやら身体に消耗を感じているらしいセリム。
今なら十分に勝機もあるのではないでしょうか。

メイも賢者の石を欲していますし、ここは何としても手に入れたいところでしょう。
その点においても、セリムは文句なしの相手です。

これから計画が発動となるので戦況もどう変わるか分かりませんが、ここはメイの活躍にも期待したいですね。
ブラッドレイとスカーの一騎打ちも始まったし、残るホムンクルスを倒すのは誰になるのか・・
注視したいと思います!






さて、続いてはスカーとブラッドレイについて。
こちらも、ついに最終決戦が始まりました。
ブラッドレイも予想以上にボロボロの様子・・。でもダリウスの言うように、それでも負けるところが想像できないのがこの人の恐ろしいところです。

対する相手は、ブラッドレイ曰く「破壊する者」。
まさにスカーの名前の由来ですが、これって今になると現状を破壊する者とも取れるから、なんだか感慨深いものがあります。

この腐ってしまった国を変える者に、スカーはなれるのかー。
国の命運を賭けて、名もなき者同士が戦うというのも、非常に面白い構図ですね。

兄の仇、そして仲間たちの仇ー
ある意味スカーもまた、ホーエンハイムと同じように長年の因縁にケリをつけようとしています。

そして彼はまだ若い。この先の未来も見れる者です。
ここで過去にケリをつけられれば、彼はここから前に進んでいくことができるのです。

そのための最後の戦い。
2人がどんな戦いを見せてくれるのか、とっても楽しみです。

対するブラッドレイにも、人間の中で生きてきたホムンクルスとして、矜持があります。
ずっと言ってきたことですが、彼が最後にどんな生き様を見せてくれるのか、これも非常に楽しみです。

彼と戦ったフーとバッカニアは、未来を背負う者たちに、素晴らしい生き様を見せてくれました。
そんな彼らと戦ったブラッドレイもまた、私たちの心に刻みつくような生き様を見せてくれるものと信じています。

実力的には、両者共相手にとって不足はなしです。
どんな戦いとなるのかー
こちらも期待して、見守りたいと思います。






最後に、アルについて。

今回のメインは、やっぱりアルでしょう!
彼は魂が引き戻され、真理の扉の前に移動していました。

これって、どういうことなのでしょう。
段々現世で彼を引き留める力より、真理の扉の前にいるアルが呼ぶ力の方が強くなっているということなのでしょうか。

それは、鎧とアルの魂を結び付けている血印の効力が弱まったから?期限が訪れたということ?
それとも他に何か理由があるのでしょうか・・。
ちょっとその辺は、まだ謎のままですね。。

また、ようやく魂のアルと肉体のアルが出会えたわけですが、これが本当に1つになって元の世界に戻れるのかも、ちょっと怪しいですよね。
だって本来は何か代償がいるものだったはずですよね。だからエドたちは必死に賢者の石に代わる何かを探していた訳で・・。

肉体と魂が引き合ったから、元に戻れるー
そんな単純な話ではないはずなのです。

となると、アルが真理の扉の前に呼ばれた状況は、現実世界に戻るのではなく、扉の前で1人の人間に戻って過ごすためなのではー・・と個人的には感じました。
その方が理に合っている気がするのですよね。真理は、何も代償なしにアルを元の身体に戻すなんてことは、絶対にしないと思うのです。

なので次にアルが人間のアルの前に現れるときは、代償が用意できない場合は、真理の扉の前から戻れなくなってしまう予感がします。
やっぱり最終的には、何を代償に身体を取り戻すのかー
そこが解決されないと、ハッピーエンドとはならないのではないでしょうか。

この問題は、どうやら最後までエドたちに重くのしかかりそうですね。
何か策を講じないと、アルはもう2度と取り戻せなくなってしまうかもしれないのですからー・・。


で、そういうことを考えると、これから発動されるホムンクルスの計画も、無謀なのではないか・・?という気がしてきました。
だって、今回のホムンクルスは人間の肉体を得るために、人間の命を犠牲にしようとしている訳ではないのです。
もっとそれを超越した、完全な存在になろうとしているのですよ。

それなのに前回同様人間の命だけを代償にするというのは、代償分が少なすぎるような気がするのです・・。
これはもしかしたら、真理の怒りを喰らって、ホムンクルスの計画が失敗する可能性も出てきたのではないでしょうか。

人間のアルが最後に発した言葉は、当然5人の人柱が揃ってしまうことを意味するのでしょう。
でも、それだけではない・・今もっとも真理に近い場所にいる人間だからこそ分かる、もっと重要な示唆が含まれているようにも見受けられます。

それこそ、真理がホムンクルスに罰を与え、世界に混沌が訪れるーそんな前触れにさえ思えます。

完全な存在って、要は真理に代わって神に成り代わるということですよね。
マスタングの未来を見ようとする眼を封じるくらいなのだから、それこそ真理にとってそんなホムンクルスの思い上がりを許す道理はないのではないでしょうか・・。

何だか、ホムンクルスの計画以上の恐ろしいことが起きる予感がしてなりません。
それこそ全世界の人類滅亡なんてシナリオさえ、ありそうな気がするのです・・。

次回こそ、計画発動の時でしょう。
その時恐怖に歪むのは、果たして人間の表情だけなのかー?
答えを待ちましょう・・。









さて、次回はホムンクルスの計画が発動される回ですね。

ついに揃ってしまった5人の人柱。そして始まった日蝕。
まさにホムンクルスの計画通り!彼はこの機を逃しはしないでしょう。

ホーエンハイムたちの逆転の錬成陣は、どこまで通用するのでしょうか。
アメストリスの人たちの命の全てが、今エドたちにかかっています。
彼らはその命を、今度こそ守り通すことができるのでしょうかー。


いよいよ物語の全てが収束する時!
次回も楽しみです☆