前回、戦いを終え、それぞれの道を進み始めた人間たち。
彼らは自分の思いを胸に、ただひたすら前を向き続けますー。

そしてエドたちもまた、旅に出る選択をしました。
後日談、彼らの成長を見ることはできるのでしょうかー?

感想です☆





外伝~ 「もうひとつの旅路の果て」





※以下、ネタバレあり※










◎あらすじ◎

戦いが終わり、エドたちがリゼンブールに戻って数日後。
ある日ピナコの家に、大きな荷物が届いた。
宛先がアルだったので、ウインリイは彼を呼ぶ。

エドとアルはやってくると、届いた!と表情を明るくする。
2人は早速バールを取り出し、箱を開けるのだった。

その中を一緒に覗いたウインリイは、あっと声をあげる。
彼らは笑みを浮かべ、中に入っていたものに声をかけた。
それは、アルの鎧の身体だった。

ーこっちのアルもおかえり!

その鎧は、歴戦を乗り越えボロボロだった。
思わず感涙を流すウインリイを横目に、エドたちは1つずつバラバラに解体された部品を取り出す。
アルはその1つ1つを眺めながら、この間までこの身体だったのにもう懐かしいなぁ・・と笑う。
だがその時彼は、重要なものがなくなっていることに気付く。

なんと頭の部分が、見当たらないのだ。
恐らくデンが持ち出したのだろう・・。
彼らはデンを呼ぶが、どこへ行ったのか返事はなかった。

そこで仕方なくエドたちは、ある部分だけで事を行おうとする。
彼らはウインリイに、1つ頼みごとをするー。


その後彼らは、リゼンブールの山の方にある鋳鉄所へと向かった。
彼らは事情を話し、中の工夫に鎧を預ける。
工夫はいいのか・・?とエドとアルの顔を見やるが、アルはしっかりとうなづいた。
はい、やってくださいー。

その言葉を受け、工夫たちはアルの鎧を焼いて、鉄に戻した。
その光景を眺めながら、アルはさっきまでの出来事を思い出す。

ー最初鎧をオートメイルの一部にしてほしいと言ったとき、ウインリイは驚いた。
この鎧はアルとずっと一緒に戦ってきたのに、残しておかないの?
そう尋ねる彼女に、アルはだからこそだーと答えた。

残しておくと言っても、どうせ倉庫や部屋の隅に置かれるだけだ。それだったら、死んでいるのと同じことだ。
彼は鎧のことを思っているからこそ、決断したのだ。
この鎧が誰かの手足となって生き続けてくれれば、僕は嬉しいー。

そうして、何度も叩いたり曲げたり焼いたり冷やしたりー
それを繰り返して、アルの鎧は鉄へと戻っていく。
ウインリイはそれを見ながら、ほほ笑んだ。
強いオートメイルになるよ。

2人はうなづき、ウインリイに丈夫なオートメイルを作ってほしい、と託した。
彼女は任せて!と胸を張るのだった。


数日後、エドは外出から戻ると、草むしりしているピナコの元へ向かった。
彼は鋳鉄所へ行っていたんだーと彼女に研ぎ澄まされた新しい鋤を渡す。

それはアルが普段のピナコを見て、思いついたことだった。
彼女はいつも雑草狩りに励んでいたがその姿が大変そうだったので、鋤を作ってもらうことにしたのだ。

早速使ってみたピナコは、その切れ味の良さに喜ぶ。
エドは古い方の鋤を借り、自分も雑草刈りを手伝おうと考えた。

するとその時、彼の前で1羽の鳥が突然飛び立った。
エドは驚き、鳥がいた辺りを見やる。

そこで彼は眼を見開いた。
その驚いた表情に、一緒に覗き込んだピナコもおやおやーと声をあげた。

恐らくデンの仕業だろう・・。
エドは彼を見やるが、デンは聞こえているのかいないのか澄ました振りをしている。
エドとピナコは、顔を見合わせ笑った。

いい家じゃないかー。

その視線の先には、アルの鎧の頭部があった。
そしてそこには鳥が卵を産み付けたらしく、小さな雛たちの姿もあった。
早く大きくなって飛び立てよ。
エドは雛たちに、優しくそう声をかけるのだったー。




















アルの鎧。

今回は身体を取り戻したアルが、鎧の身体と向き合う話でした。
これが本当に最後のお話・・。
ほっこりする柔らかい話で、とても良かったです。

歴戦を戦い抜いてきた、アルの鎧。
苦い思い出もあるでしょうが、それでも彼と人生を共にしてくれた大事な仲間です。

エドとアルはそんな鎧を鉄にならし、オートメイルの1部として使ってもらうことを希望しました。
置物として眠らされるより、誰かの中で生き続けてほしい・・。
命の定義が大きい2人が考えそうなことですよね。とてもいい考えだと思いました。

命は形ではない・・。姿形は変わっても生き続けるものだー。
それもまた、エドたちが辿り着いた答えなのでしょう。
丈夫なオートメイルになって、人々の暮らしを支えていってほしいですね。

また、ラストもすごくよかった!
彼らが紡いだ道に、また新しい命が生まれ育つ・・。
まさに人間の道は自分が死んだとしても続いていくー
そんなことを思わせてくれました。


これで本当に、この物語もおしまいですね。
全編通して、人間の生き方、命の素晴らしさがよく描かれていた作品だったと思います。

時には残酷すぎて目をそらしたくなる部分もありましたが、何よりこの作品のキャラたちがそこから目を背けず前へ進んでいくので、私たちの方が支えられながら読み進められたような気がします。

様々な人たちがその中で命を落とし、それもすごく辛いものでしたが・・その犠牲があって今の平和がある。
そう思うと、死んだ人たちの命も決して無駄にはなりません。
なんだか命への考え方を、とことん教えてもらったような気がします・・。


また魅力的なキャラがすごく多いのも、この作品の特徴ですよね!
皆が個性的で、しかもその内面も深く掘り下げられているので、読んでいて非常に共感する部分が多かったです。

そして何といっても、女性陣がパワフル!
こんなに強い女性陣が揃う漫画って、あまり見ないかも。それほどに、印象的な強さを持つ女性たちがたくさんの作品でした。
自分も女だから、見習いたいわ・・。

全編通して、とても重厚で読み応えがあり、読んだ後の満足感もダントツNO.1の作品でした!
こんな作品を描ける荒川先生には、改めて脱帽です!!


夏頃は忙しくて更新も止まってしまい、長らくお待たせしてしまいすみませんでした。
いつも身にきてくださる皆さまに支えられて、無事この作品も終えることができました。

明日からはまた違う作品のレビューをしていきたいと思います!
ご興味があえば、またお付き合いいただけると嬉しいです。

ありがとうございました(^^)