前回、三谷を囲碁部へ誘ったヒカル。
しかし三谷は金が稼げないから、とその申し出を断ります。

そして再び碁会所に行き、賭け碁に向かう三谷。
それを止めさせようと走るヒカルと佐為。

彼らは三谷を改心させることができるのでしょうかー?!

感想です☆





前哨戦~第21局 「最も卑劣な行為」




※以下、ネタバレあり※









◎あらすじ◎

ヒカルが着いたときには、三谷(みたに)は客と1万賭けて対局をしているところだった。
1万・・?!
その金額に、ヒカルは眼を見張る。

店主に見るだけ、と断って、ヒカルは中へ入る。
盤面の状況を確認すると、どうやら試合は中盤のようだった・・。
三谷の方が優勢な状況に、これならずるをしないんじゃないか?とヒカルは佐為(さい)に囁く。

佐為もまた盤面を見つめながら、動向を窺うのだった・・。


その頃、理科室に残ったあかりは、筒井(つつい)に三谷のしたずるとは具体的にどんなことなのか、と尋ねていた。

筒井は簡単に碁盤に石を並べ、整地の仕方をまずは説明してみせる。
碁は、地の大きさで勝敗を決める。だが勝負が終わった後の地は、一目で分かるように四角く並んではいない。
なので打ち終わった後に、数えやすいように四角く並べ直すことを整地というのだ。

その説明を聞いたあかりは、その整地の際に自分の地を増やしたり、相手の地を減らしたということかー!と理解する。
それって簡単にできるの?
彼女が更に尋ねると、筒井は簡単なんてもんじゃない・・と喉をごくん、と鳴らした。

仮に僕がモタモタした手つきでやったとしても、ほぼ相手に気付かれることはないよー。

それは、互いに不正をしないという絶対的な大前提の元に、囲碁の対局は行われるからだ。
だから皆、相手が地を整理するときの手つきなど誰も注意して見ることはない。

つまり整地のずるは、その信頼関係を踏みにじる最も卑劣な行為なんだー!
筒井の言葉に、あかりはようやく三谷のしていることの重さに気付く。

そんな子を、ヒカルは囲碁部に入れようとしているの・・?
2人はどうすべきか・・と、戸惑いの表情で互いを見やるのだった。


碁会所。
三谷と客の対局は続いていた。

勝負は、明らかに三谷の優勢で進んでいた。
こんな腕で、よく1万も賭けるな・・。ヒカルはずっと勝負を覗きながら、これなら三谷も大丈夫だろうーと少し安堵する。

客の方も自分が押されているのは分かっているようだが、酔っているからかなぜか上機嫌で、勝負は最後まで分からないからなーとまだ勝つ気でもいるようだ。
それを聞いた三谷が思わず笑うと、ふと男の瞳に真剣な色が浮かんだ。

笑ったな。最後まで笑っちゃいけねぇよ、勝負ってもんはなー。

その様子に、ヒカルたちは何か不穏なものを感じる。
良いこと言うね。
三谷はちらっと男を見つめると、次の手を置く。

だろう?兄ちゃんも人の話を聞く耳持ってるな。
男はそう笑うと、煙草を取り出して火をつける。
その様子を見ていた三谷はーふと気付いた。
・・おじさん、左利きかい?

彼は碁は右手で打っていたが、煙草をつける手は左手だったのだ。
それを指摘された男は、口元に浮かんだ笑みを更に歪ませた。
観察力も鋭いな。大したもんだ・・。

そうして、彼は左手で碁石を掴んだ。
いいだろ、ちょっと早いが勉強させてやるよ、大人の碁を。1万円の授業料でなー。

その瞬間、さっきまでは酔って覚束ないようだった打ち方が、がらっと変わった。
男の瞳には真剣さが宿り、石を打つ姿勢が変わることで碁盤に石がぶつかる音も変わる。

勝負はこれからだぜー!
彼は三谷の顔を覗き込み、笑う・・。

・・どうやら今までのは演技だったらしい。
ヒカルたちが目を見張るなか、男の猛攻が一気に始まった。

三谷が打つと、男は即座に大きな音を立てて石を置く。
そうして三谷に心理的なプレッシャーを与えながら、彼はどんどん今までの差を詰めていくー。

その最中、男は巧みに置いてあった石に触れ、一路ずらしていく。
それに気づいた佐為はすぐにヒカルに伝えるが、余りの早業にヒカルにはなかなか分からない。
そして戸惑っている間にも、形勢はどんどん男の有利に傾いていく・・。

その時ーようやく三谷も気付いた。
石がいつのまにか一路ずらされている・・!!
彼は呆然と、盤面を見つめた。

・・駄目だ。腕そのものが違うのに、その上石をずらされては・・。
彼は力なく、残りの石を置いた。
いよいよ終局だ。男はどっちが勝ったかなー、と早速整地を始める。

ほらほら、整地でいじらないと勝てないぜ!
彼はそう笑いながら、自分の整地を多めに動かした。
俺のやってたことと、同じことを・・?!
三谷は焦って手を伸ばすが、その間にも男はどんどん三谷の方まで整地を整えていってしまう。

ー結果、12目半の差で、男の勝ちだった。
男はにやっと笑い、三谷に手を突き出す。
さぁ、兄ちゃん、1万円出しなー。




















最低な対局。


今回は三谷が客の男にハメられて、対局に負ける話でした。

いやー、予想外の展開でしたね。まさか客の男も、ずるをするとは・・。
これ、恐らく仕込まれていますよね。ずるを続ける三谷を見かねて、店主がこの客にこぼしたとかかな・・。
それを聞いた男が、お灸をすえるために勝負を挑んだのではないでしょうか。

そもそも2人の対局をセッティングしたのも、店主ですからね。
三谷のこと、うっとうしく思っていたのかな。毎日のように碁会所に通っていた三谷からしたら、これはショックなことですね。
店主がしたことは店的にも道義的にも正しいけど、このやり方はなー・・。

三谷はこの結果を受けて、どう考えるのでしょうね。
自分がしてきたことを返されて、実力的にも負けてしまうなんて、自分で想像したらもう2度とこの碁会所には来れないほどショックじゃないかなぁ。
ちょっと調子に乗って1万円でもいい、なんて言っちゃったし、恥ずかしい気持ちも大きいと思います。

しかもヒカルがずっと見てましたからね・・。これは相当辛いでしょう。
このことがきっかけで、彼が囲碁から遠ざかってしまわないといいな。せっかくまだ囲碁の腕は成長中なのに、嫌な思い出で終わってしまうのはもったいなさすぎます。

もちろん彼が今までしてきたことは、反省しなければなりません。
元々は三谷がずるをしたからこそ、今回のことは引き起こされたのですからね。
男のやり口は汚いですが、あえて悪役を買ってくれたのかもしれないし・・。そう考えると、ここが三谷が改心するためのチャンスだともいえるでしょう。

いずれはバレることでしたし、今回のことは結構ショックな出来事ではありますが、ヒカルの力も借りて無事に立ち直れるといいな、と思います。
そして改めて囲碁に向き合ってほしいですね。

ずるをして得られるものなど、本当はないこと。それよりも遥かに失うものの方が多いこと。
今回のことで三谷もよく分かったでしょうから、これで賭け碁には懲りて、囲碁部に入ってくれるのが理想ですね。

そのためには、ヒカルとの対局も必要かな。
ヒカルや筒井の存在が、三谷を支えてくれると信じて見守りたいと思います。




で・・この後の展開ですが、やっぱりこの客とはヒカル(佐為)も戦うのかな?
三谷が悪いとはいえ、このやり方は余りにも卑劣でしたからね。石を一路ずらすなんてずる、佐為がこのまま見逃すはずはありません。

この客だって、恐らく普段からそういうことをしているから、こんなにスムーズにずるできたのでしょう。
いくら腕があっても、こういう人物を見逃すわけにはいきませんよね。三谷は1万も取られちゃいますし。

ここはボコボコにのして、男の鼻を明かしてやってほしいと思います!
囲碁を汚す者に、本当の囲碁が何なのかをしっかりと教え込んでやってください!!







さて、次回は客の男とヒカルたちが対局する話でしょうか。

いくら三谷の引き起こしたこととはいえ、余りに子供相手に卑劣すぎる囲碁。
度重なるずるを、佐為はきっと許さないでしょう。

三谷がお灸をすえられたように、この男にもしっかりとお灸をすえてほしいものですね。
佐為の天誅w、期待したいと思います。


次回も楽しみです☆