今回から、12巻です!

前回、越智に勝利しプロ入りを果たしたヒカル。
彼は和谷、越智と共に新しい世界へと踏み出します!

プロ試験から半年後には、正式にプロ棋士として活躍することになるヒカル。
どんな猛者たちが、彼を待ち構えているのでしょうかー?!

感想です☆




新初段シリーズ~第97局 「待ちうけるプロ達」





※以下、ネタバレあり※









◎あらすじ◎

週末。
久しぶりに和谷(わや)と会ったヒカルは、伊角(いすみ)が院生も九星会も辞めたと聞いて驚いた。

和谷によれば、彼は気まずくて暫く伊角と連絡を取っていなかったのだという。
その間に伊角は全てを辞め、姿を消してしまっていた。
彼は久しぶりに様子を見に行こうと院生の検収日に会館を訪ねて、そのことを知ったのだった。

ショックを受けた和谷だったが、彼に伊角のことを教えてくれた院生師範は、その方が伊角のためには良かったかもしれないと話したそうだ。
院生や奨励会に顔を出すだけが練習ではないし、今の伊角には一旦離れて1人で冷静に考えられる時間が必要だろう。
そう言った師範は微笑み、それに伊角は必ずまたプロ試験を受けるだろう、とも断言したという。

伊角は自分の碁がここまでのものだなどとは、決して思っていない。絶対に来年も来るはずだー。
その確信の前に、和谷は言い返すことができなかった。

それに・・今は人のことより自分の未来を考える方が先だ。
今まで以上に頑張らないとーと、和谷はぐっと拳を握りしめる。

それを聞いたヒカルもはっとし、気持ちを改めた。
そうだ、自分も頑張らなきゃ。
彼は佐為(さい)と顔を見合わせて、うなづく。

すると和谷が話題を変えた。
彼は今日はヒカルに記録係の仕事のことを教えようと思って、やってきたのだという。

記録係とは、プロの対局の棋譜を記録することだ。
プロの手合いでは、3次予選から人がついて記録を取ることになっている。
棋譜だけではなく、時間も記載するのだー

そう言って、和谷はヒカルに見本の記録を見せる。
そこには一手に何分かけたかなど、事細かに記録が為されていた。
ヒカルは一目見ただけで苦手感を露わにし、和谷がこれを出来ると聞いて驚愕する。

仕方なくヒカルは、和谷にやり方を教えてもらうことにした。
その苦戦する姿を眺めながら、佐為はヒカルがいよいよプロの世界に行くーと胸を高鳴らせた。

ヒカルも対局をたくさんできることが楽しみらしく、和谷に色々と話を聞く。
そこでヒカルが塔矢(とうや)とはいつ打てるのかと尋ねるのを聞き、佐為ははっと目を見開いた。

そうだ、あの者とも打てる機会がー?!

佐為は心臓を跳ねさせたが、和谷はトップの棋士との対局なんて5年は先だ、と呆れた声をあげた。
理屈ではずっと勝ち続ければトップまで行きつくことになるが、現実には無理な話だ。4段以下のプロは、2次予選まで行くのが関の山だろうー。

和谷はそう説明するが、それでもヒカルたちは塔矢たちにも道がつながっていると知り顔をほころばせる。
もう同じ世界にいるんだ。いつかは自分も対局することができるんだ!!

そう興奮するヒカルの言葉を聞き、佐為はえ・・?と顔を曇らせた。
ヒカル・・私は?

ヒカルはそんな佐為の不安そうな表情には気付かず、様々なプロ棋士たちと戦えることを想像して和谷と語り合っている。
今まで見知ってきたプロ棋士たち・・佐為はその顔を1人ずつ思い出して、改めてある真実に気が付く。

そうだ、彼らとつながっているのは私ではない。ヒカルだけなのだー・・。

そして彼は、ある嫌な予感を感じて身体を震わせる。
それはヒカルが今後のことをどう考えているのかという不安だった。
ヒカルはもう、私に打たせてくれる気はないのだろうかー?!


同刻ー
あるホテルでは、王座戦が行われようとしていた。

王座である座間(ざま)は、会場に着くとエレベーターを待つ。
すると開いたエレベーターの中で、彼は今日の対局相手である塔矢と出くわした。

2人で並んで乗り込むと、座間はまず塔矢が名人位の防衛6連覇を果たしたことを祝った。
だがその一方で塔矢は、棋聖戦への挑戦権は逃していた。
対局過多で疲れているのではないかー?
そう言って座間は塔矢の顔を覗き込み、笑う。

塔矢は確かに疲れがたまっているのかもしれないと答えながらも、今日は心身ともに万全だ、と返す。
その答えに鼻を鳴らすと、座間はアキラのことに話題を移した。
アキラもまた成績が好調だと聞き、座間は内心面白くなかったのだった。

アキラは現在20連勝で進んでいる。
今のところ負けたのは、座間と戦った新初段シリーズのみだ。
じゃあ今日は息子さんのリベンジ戦ですかな?!
座間はそう言って勢いよく笑うが、塔矢はそれには乗らず乾いた笑みを見せるだけだった。

そうしている内に、2人は会場に到着した。
王座戦、第1局が始まるー。


一方、棋院会館。
新聞を読んでいた桑原(くわばら)は、ある記事を見て声をあげた。

その声を聞きつけて、受付から男が出てくる。
何か面白い記事がありましたか?
そう訊かれた桑原は、プロ試験の結果が載っていたんだ、と答える。

そこには写真入りで、ヒカルのことが載っていた。
一度ここですれ違った彼の顔を、桑原は記憶していたのだった。

半年前にここですれ違ったとき、桑原はヒカルにただならない気配を感じた。
そこで覚えるようにしていたのだが・・これは面白くなったな、と彼は1人笑みを浮かべる。
彼が、緒方(おがた)が言っていた新しい波かもしれないー。
桑原はそう期待し、ヒカルがプロ囲碁界にやってくるのを待ち望むのだった。


その夜ー
ヒカルはいつものように、佐為と碁盤を囲んでいた。

昼間の和谷との会話で、彼はすっかりプロになることが楽しみになっていた。
だがその向かいで、佐為は思いつめたように固い表情で座っていた。

ヒカルはそのこと気付かず、いつものように囲碁を打とう、と持ち掛ける。
それに応えながらも、佐為の中の靄は晴れなかった。

ヒカルが他の棋士たちとの対局を待つように、彼らもヒカルを待っているのだ。
彼らが待っているのは、私ではなくヒカルなのだー。
その思いは、佐為の心をどんどん締め付けていくのだった・・。




















ヒカルを待つ者たち。

今回はヒカルがプロになることを楽しみにするなか、佐為が自分の存在に陰りを感じる話でした。

うーん、ここのところ何回か佐為がこのような不安を訴えているのが気になりますね。
なんだか彼が消えるフラグが立っているような気がします・・。

元々長く人間界に残っていただけで、いつ成仏するかなどは不明な佐為。
いつまでもいるのが当たり前だとヒカルも佐為も思っていたようですが、その前提がそもそも危ういと気づきだしたようです。。

実際神の一手を極めるまでは成仏できないと佐為は思っているようですが、ヒカルがプロとして走り出した今、彼の出番はどんどん減っていきます。
そうなるとヒカルについている間はもうその願いは叶わないかもしれない訳で・・。そこのところ、佐為はどう折り合いをつけていくのかは考えねばならないところですよね。

初めは皆ヒカルの中の佐為を見ていましたが、それが段々とヒカルに向けられるようになりました。
そしてこれからはその流れはどんどん加速し、やがて皆佐為のことは忘れてしまうでしょうー。

そうなった時、佐為はどうするのか。ただヒカルの横で見ているだけなのか、それとも何か策を講じるのか。
そこは今後の佐為の課題ですね。不安がっているばかりではなく、具体的に自分の身の振り方を考えるべき時に来たということでしょう・・。

なかなか難しく直面したくないような苦しい問題ではありますが、囲碁を打てないのであれば佐為にとってこの世界に存在する理由は少なくなります。
そしてその時は着実に近づいているー佐為がどう動くのか、今後に注目ですね。

1つ、ヒカルに直接不安を伝えるのも手だと思いますよ。
ヒカルは元々鈍感だし、今はプロになることに意識が行ってしまっているので、佐為がそんなことに悩んでいるなど思いもしていないでしょう。

だからこそ佐為はちゃんとヒカルに自分の心情を吐露し、囲碁をできる機会を作ってもらうことも大事だと思うのです。
思いがすれ違ったまま、佐為が成仏してしまうなんてことがないように・・。

その上でどう対応するかは2人の問題ですし、喧嘩になってもいいと思います。ただ今の佐為が1人で不安を抱えている状況は違うんじゃないかなーと思うのですよね。。
数奇な人生を共にした者同士、新しい道を切り開いていくことができればいいな・・と願っています。

佐為・・頑張れ(><)





さて、そんな今回は久しぶりにプロ棋士たちの様子も描かれました。
桑原のじいさんも元気そうでwヒカルのことも覚えていてくれたようで何よりです。

彼の場合は年の功というか・・何か第6感のようなものが働いたようですね。
ヒカルの中に佐為を見たようで、彼に注目しています。

去年は新初段シリーズで真柴と対局していたので、桑原が出てくる可能性は今年もあります。
もしかして早々とヒカルとぶつかることもあるかな?
個人的には緒方あたりがヒカルの相手として来るかなーと予想してますが、桑原みたいな面倒なwタイプとヒカルがどう戦うのかも見てみたいかも。

桑原は新しい世代と戦う気も満々のようですし、ヒカルやアキラたちの強固な壁として君臨しそうですよね。
そこをヒカルたち若い世代が打ち崩していけるのか・・そんなところも楽しみです!



後は、塔矢と座間の王座戦。
こちらも共に知った棋士同士の戦いということで、勝負の行方が気になるところです。

塔矢自身は名人のタイトルを今年も保持したそうですが、棋聖戦への挑戦権は逃したそうで・・。
座間の言うように、対局が多そうで大変ですね。体力も気力もないと、この世界を渡り歩くことは難しいのが伝わってきます。

アキラを下した座間との勝負ということで、塔矢は表には出さないものの闘志がみなぎっているのは感じられます。
でも座間もアキラとの対局で強さは十分分かっているので、どちらが勝つのか非常に楽しみですね。
2人にも若い棋士たちを迎える壁として、いつまでも君臨し続けてほしいものです。


他にもヒカルが関わってきたプロ棋士たちはたくさん。
その人たちとこれから対局のチャンスが続々やってくるのかと思うと、ヒカルならずともワクワクしちゃいますね!

前回はちょっとしんみりしたけど、やっぱりヒカルには前向きが似合います。
和谷、越智と共に新しい時代を築いていってくれること期待しています!!







さて、次回は塔矢と座間の対局回でしょうか。
しばらくはプロ棋士たちに焦点が当たるようになるのかな?

ヒカルたちの次の大きな勝負は新初段シリーズということで、彼らがそこに向けて奮闘するシーンなんかも描かれるのかな、と思います。
そして佐為の葛藤も・・。色々と気になるところ、たくさんですね!

ヒカルに新しい世界が開けていくと同時に、疎外感を強める佐為。
この溝が埋まることは、そして解決策はあるのでしょうかー。

暫くは佐為の動向にも注意が必要ですね!
次回も楽しみです☆