前回、saiとの関連を疑う緒方の手からどうにか逃げることのできたヒカル。
しかし塔矢の引退の意志は揺るがず、しばらくはプロ囲碁界も騒がしいままのようです・・。

そんな中、自身の残り時間を感じ取り運命を憂う佐為。
彼は本当にこのまま消えてしまうのでしょうかー?!

感想です☆




sai vs toya koyo~第119局 「力試し」






※以下、ネタバレあり※










◎あらすじ◎

王座戦本戦1回戦。
挑戦者である倉田(くらた)は、まず1勝目を相手の鎌石(かまいし)九段からもぎ取る。

終局後倉田は、新聞部のほうへ顔を出した。
記者の天野(あまの)は倉田を見つけ、その表情から彼が勝利したことを読み取る。

今年は本気でタイトルを狙っているからー!
そう笑いながら倉田は、同日行われている十段戦の第5局の途中経過を見せてくれ、と天野に頼む。
新聞部の方には、対局の途中経過が都度送られてくるようになっているのだ。

一番新しい棋譜を倉田に渡すと、天野は現時点では形勢は互角だ、と話した。
この調子だと塔矢(とうや)が勝つかな・・。
そう言いながら天野は、緒方(おがた)はどうも詰めが甘いんだよなぁと息をつく。

だが倉田の緒方への見立ては、天野とは違った。
確かに甘さのある緒方だったが、最近はタイトル戦を何度も経験して着実に力をつけてきている。
実際彼の打つ碁には粘り強さやしぶとさが出てきているーというのが倉田の評価だった。

それよりも・・倉田が気になるのは、塔矢の手のほうだった。
何か心境の変化でもあったのだろうか・・?
そう思わせるほど、塔矢の打ち筋がいつもと違っていたのだー。


翌朝ー
新聞を読んでいたヒカルは、思わず声をあげた。

新聞には、昨日の十段戦第5局の結果が載っていた。
塔矢が負けた・・!
緒方が十段のタイトルを奪取したことを告げるその記事に、ヒカルの胸は激しく粟立つ。

塔矢が負けたのは、sai(サイ)との対局敗れたからだろうか。それで疲れが出たり調子が出なかったのだとしたら、どうしよう・・。
授業中も気が気でなく、ヒカルは第5局の棋譜を確かめたい思いに駆られる。

棋院に行けば、棋譜は見られるのだろうかー?
学校が終わると、ヒカルはとりあえず棋院を訪ねてみよう、と決意するのだった。

放課後ー
ヒカルはお腹がすいたので、先にラーメン屋に寄っていくことにした。
そこでのれんをくぐったヒカルは、店内にいる客を見つけて驚く。

なんとそこにいたのは、倉田だった。
ラーメンを注文してから、ヒカルは彼の前に座る。
どうやら倉田は近くで仕事があり、この店に寄ったところらしい。

自分は棋院に十段戦の棋譜を見に行くつもりなのだ・・。
そう話すと倉田は、自分はもう見たよ、と顔を上げた。
それを聞いたヒカルは運がいい、と倉田の感想を尋ねてみる。

すると倉田はまず一言、塔矢行洋(とうやこうよう)らしくない碁だった、と言い切った。
塔矢の囲碁は、いつも攻守バランスのいい囲碁だ。だが昨日はどこかタガが外れたような碁だったなーと倉田はラーメンをすすりながら語る。

つまり酷い碁だったのか・・?
ヒカルは不安を感じるが、それを聞いた倉田は首を振った。
とんでもない、良い碁だったよ!!

彼は塔矢の一連の碁を見て、内心ひどく興奮していた。
今までの塔矢とはまったく違う碁。タイトル戦の最終戦だというのに臆すことなく、面白い手をバンバン打っている。
結果負けてしまったけれど、あんな若い碁をあの年でまだまだ打てるなんてすごすぎる!!

そう倉田が熱く語るのを聞きながら、ようやく呑み込めたヒカルはほっと息をついた。
良かった、良い碁だったんだ。それなら引退もしないかもしれないな・・。
思わず微笑むと、倉田も笑顔を見せた。
嬉しいな、息子も倒し甲斐あったけど、塔矢もまだまだ倒し甲斐がありそうだ!!

息子・・。
アキラのことだと気づいたヒカルは、倉田がアキラと戦ったことがあると知る。
2人は名人戦の二次予選でぶつかったらしい。
その時は倉田が勝ったけど、今アキラは本因坊戦の三次予選まで進んでいるーと倉田は眉をひそめた。

アキラはまだ二段なのに、もう低段者の中では敵なしだ。
予想より早く頭角を現してくるかもしれない・・。
倉田は真剣な表情でそう言い、自分の眼前に迫るアキラの脅威に身震いした。

その表情から、ヒカルもアキラが更に先に進んでしまっていることを痛感する。
もうそんなところまで行ってるのか。俺は追いこすどころか、追いつくこともできないのかー?!


その後ーラーメンを食べ終えた2人は店を出た。
さっきのアキラの話を聞いて危機感を感じたヒカルは、帰ろうとする倉田に頼みがある、と声をかける。

自分と一局打ってください!!

そう頼むと倉田は一度は断ったが、ヒカルがサインが欲しいなーとすり寄ると、満更でもないような顔を見せた。
そして結局ヒカルが対局に勝てたらサインをもらえる、という条件つきで、彼は一局打つことを快く了承するのだった。

ヒカルは心の中でガッツポーズをしながら、まずは自分の力を試してみよう、と目論む。
倉田相手に、今の自分はどこまで打てるかー見極めてやる!!
そうして2人は近くの碁会所へと向かうのだった。

碁会所に入ると、今話題の倉田がやってきたとあって、店の中は一気にさざめきだった。
店主も客もいそいそと倉田を碁盤の前に案内し、彼の囲碁を見ようと周りを囲む。
倉田は、ヒカルが自分のサインが欲しいから対局を申し込んできたんだ、と嬉しそうに話して聞かせた。

ヒカルは苦笑しながらも、早速対局の準備を始める。
だが店の間違いで、用意された碁石はどっちも白だった。
気付いて変えてもらおうとしたヒカルだったが、倉田はそれを止める。

ちょうどいい、これで打とう。一色碁だ。
彼はそう言うと、ヒカルに白石を黒石に見立てて打つように指示する。

つまり同じ色の石だけで対局するというのだー。
初めての試みにヒカルは動揺するも、早速倉田は対局を始めてしまう。

これは面白いことになりそうだー。
ヒカルの様子から一色碁は初めてだと踏んだ倉田は、内心胸を躍らせる。
観戦する客も戸惑うなか、異色の対局は始まるのだったー。




















一色碁。

今回は塔矢が十段のタイトルを奪取されたことをヒカルが憂うなか、ヒカルと倉田が一色碁で手合わせをする回でした。

まずは十段戦。
塔矢が負け、緒方が十段を奪取しました。
これで緒方は初タイトル獲得ということになるのでしょうか。おめでとうございます!

しかし倉田の評を聞くと、塔矢の打ち筋は挑戦する心にあふれ、とても若々しい碁だったようです。
これはもちろん、塔矢がsaiと打ったことで囲碁へのマンネリ感を克服し、もっと強くなりたいと考えた結果でしょう。

姿は見えなくても、確実に他者に影響を及ぼしているー佐為の存在が感じられて、嬉しいことですね。
本人がそれどころではないのが、残念なところですが・・。

そういう囲碁に挑戦できたのだから、たとえタイトルを失っても塔矢はきっと満足しているでしょうね。
むしろ引退を考えているのだから、タイトルなんてどうでもいいと思っていそうw

ヒカルの見立てとは違い、塔矢の引退の意志は変わらないでしょう。
でも彼は引退してしがらみから解放されたら、尚一層飽くなき囲碁への探求を続けていくのでしょうね。
そうしていずれは後人を育てていく側に回るのかもしれません・・。

たとえ佐為が消えたとしても、そうやって佐為の心が囲碁の中にはずっと灯り続けるといいですね。
今回佐為の姿がまったく描かれなくて不安でしたが、彼が少しでも救われるような展開がありますように・・。
引き続き願って見守ろうと思います。


それにしても塔矢にとっては引退は良いことなのでしょうが、十段を奪取されての発表となったら、きっと囲碁界は大騒ぎでしょうね(^^;)
皆がどんな反応をするのか楽しみなようなドキドキするような・・。
倉田も今回、塔矢を倒す意気込みを新たにしていましたからね。少なからずショックを受けそう。

いよいよ引退のときが近づいたということで、十段戦は終わりましたが塔矢からは眼が離せませんね!
さて、プロ囲碁界、どんな展開を迎えるのでしょうか・・。





続いて、倉田との一色碁について。

倉田、本当にちょろいですね笑ヒカルにちょろいと言われちゃうんだから、相当ちょろいですw
ヒカル、うまいこと倉田の気持ちを引き立てて、見事対局する機会を手に入れちゃいました!

倉田の囲碁、1度見てみたかったんですよねー!
なんだかつかめない人物ですが、若手の中ではアキラと並んでトップの実力です。
どんなタイプの碁打ちなのか、少しでも分かると嬉しいな。

彼抜けているように見えて、意外と抜け目ないし周りをよく観察しているんですよね。
闘争心も強いし、プロ囲碁界の渡り方などもよく考えているので、意外と策略家にも見えます。
案外堅実な手を打つ棋士なのかなぁなんて予想してるんですが、果たしてどうなのかー。

また、彼がヒカルをどう評するのかも気になりますね。
アキラには危機感をあらわにした倉田。
彼はヒカルとアキラの因縁を知りませんが、そういう真っ白な状態で見ると、今のヒカルはどのくらいの実力に映るのかーこれは興味があります!

もしアキラ同様に脅威だと感じてもらえたなら、ヒカルにとってこれほど嬉しいことはないですよね。
まだプロになってからの様子が描かれていないので、ヒカルがどれくらい伸びているのかも楽しみです。

それに・・一色碁ですが、案外ヒカルは得意な気もするんですよね。
ヒカル、記憶力はいいじゃないですか。3面打ちなどで鍛えられてもいるし、盤面を記憶するのは得意なのではないかなーと予想してます。

となると油断している隙に、倉田を出し抜くなんて場面もあったり?
まぁ簡単に勝てる相手ではないので期待はほどほどにしておきますが、是非ここで倉田の記憶に留まるようなプレーを見せてほしいものです。

これは自身の実力を確かめるためだけではなく、倉田に認めてもらうチャンスのある勝負です。
ヒカルは私たちの期待に応えてくれるのでしょうかー?!
どんな勝負になるのか、楽しみに待ちたいと思います(^^)








さて、次回はヒカルと倉田の一色碁ですね。

普通の対局ではなく、一色だけで戦い抜く一色碁。
ヒカルは初めてですが、無事に打ち切ることができるのでしょうかー?!

そしてアキラを脅威と睨む倉田に、彼は自分の実力をも見せつけることができるのでしょうか。
久々のヒカルの活躍に、俄然期待しちゃいますね!

次回も楽しみです☆