前回、年下の楽平に負けたことで、自身を失いかける伊角。
彼は中国棋院に滞在する棋士たちの熱心さと強さに打たれ、自分の立ち位置を見失いかけます・・。

このまま伊角は惨めな思いで中国を後にするのか、それとも挽回し自信をつけて日本へ戻るのかー。
伊角の動向が注目されます!

感想です☆




中国棋院~第133局 「試される伊角」





※以下、ネタバレあり※










◎あらすじ◎

中国棋院ー
そこに集う棋士たちのレベルは、伊角(いすみ)が思うより遥に高かった。
自分はこの中で結果を残せるのか・・。
彼は不安を感じ、表情を暗くさせていく・・。

その時、1人の棋士が伊角を対局に誘った。
どうやら一手10秒の早打ち碁を打とうと言っているらしい。
伊角はその案を受け、礼をして対局に臨むー。

今回の相手は、伊角と同年齢くらいに見えた。
だが彼の強さは、日本でいえばプロの九段クラスだった。
伊角は終始押されっぱなしとなり、早々に負けを認めてしまう・・。

すると相手の少年は少し驚いたような表情で、盤面を指して何か説明を始めた。
観客たちも同じようにうなづきながら、盤面を指さしていく。
言葉が分からない伊角はその動きを必死で目で追っているうちに、はっと気が付く。

彼らは、伊角にはまだ逆転のチャンスがあったと、その打ち筋を教えてくれていたのだー。
投了は早すぎたか・・。
伊角は唇を噛み、悔しさを滲ませる。

少年は伊角に何か声をかけて、席を立っていく。
また周りの声が自分について話しているような気がして、伊角はそのままうつむき動けなくなるのだった・・。

と、そんな彼にもう1人声をかける者があった。
君、日本から勉強しに来たの?
そう日本語で問われて、伊角ははっと顔を上げる。

彼は今日は休んでいたらしく、夜ここに来て初めて伊角が来たことを知ったのだという。
楊梅(ヤンハイ)と名乗るその男は、親し気に伊角の前に座り、話を始めた。
彼は語学を学ぶのが趣味で、日本語もある程度は話せるのだという。

伊角が近くのホテルに泊まっていると知った楊は、自分の部屋が1人分空いている、と彼を誘った。
部屋代もいらないぜー。
そう提案された伊角だったが、彼は部屋でくらい1人になりたいーとその申し出を断ってしまう。

その後も対局にも誘われたが、昼間からの出来事を引きずったままの伊角はそれもまた断った。
楊は残念そうに離れていく・・。
その背中を見送りながら、伊角は大きくため息をついた。

彼は去年のプロ試験の苦々しい記憶を思い起こしていた。
あの時はヒカルとの件で崩れた後、3連敗した。その連敗を脱するきっかけとなったのは、越智(おち)に対する意地だった。
自分の碁は、自分の力が支えてくれる。だから自分を信じようー。
あの時はそう思って、自信を奮い立たせたのだ。

だが・・今の彼は、中国棋院でもその自信を保ち続けられるか確信がなくなってしまっていた。
自分の碁は、果たして自分を支えられるのだろうか・・?
彼は今一度ヒカルたちの顔を思い出し、彼らがプロの世界で待っているんだーと無理やり気合を入れ直す。

弱気になるな!ここで自信を失ったまま日本に帰ったら、もう自分にプロ試験での勝ちはない!
そうしたら、去年合格した3人共もう対等に向き合うこともできないんだぞー?!

と、その時伊角は、日本から電話がかかってきていると声をかけられ、慌てて受話器を受け取った。
電話の相手は父親で、九星会のメンバーから中国に彼が残った件を聞いた、との連絡だった。

父親は勝手に決めた息子に若干呆れながらも、伊角の意志を尊重するーと話す。
そこで伊角は、一か八かの賭けに出ることにした。
プロ試験の始まる夏まで2か月・・ここに残って勉強することにしたのだ。

ここで自信を失わず逆に自信をつけられれば、堂々とプロ試験やプロの世界に挑むことができる!!
そのためにも、今ここで逃げてはいけないー・・

一度決めてからは、伊角の行動は早かった。
彼はさっきの楊の話を思い出し、一旦は断ったものの滞在費を浮かせるために彼の部屋に世話になることにする。

ここで勝つしかないんだ・・。
伊角は覚悟を決め、楊の部屋のドアを叩く。
すると楊は明るく伊角の決断を受け入れてくれた。

楊の部屋には、碁盤もパソコンもあった。
部屋に碁盤があるなら、夜だって勉強ができるー。
喜ぶ伊角に、やっぱり熱心だな、と楊は苦笑する。

それから彼は寮のシステムを軽く説明すると、互いに好きなことをして過ごそうーとパソコンの前に向かう。
伊角も棋譜でも並べよう、と碁盤の前に座った。

楊がパソコンをいじりながら、今日は誰かと対局したのか?と訊く。
伊角はうなづき、楽平(レェピン)に負けてしまったことを明かした。

その途端ーーニコニコしていた楊の表情が一変する。
彼は険しい顔で伊角を見つめ、伊角の向かいに座る。そして今から一局打とう、と有無を言わさぬ口調で伊角に迫った。

楽平に負けているようじゃ、ここには置いておけないな。
楊は真面目な顔で、伊角にそう宣告する。
伊角は戸惑うが、そんな彼に構わず楊は、2子置いて戦おうーと対局の準備を始めるのだった・・。




















自信をつけるために。

今回は伊角がプロ試験に向けて自信をつけるため、2か月間中国で勉強することを決意する回でした。

中国棋院に集うプロ棋士たちの実力に圧倒され、自信を失う伊角。
彼は自分を追い込むため、プロ試験の始まる夏まで中国に残るという決断をしました!!

いやー、まさに追い込みましたね。
ホテルも引き払い、これでもう金銭的にも後戻りはできませんよ。
彼がどこまで成長してくれるのか、楽しみでなりません(^^)

前回指摘しましたが、今回も気持ちのコントロール方法が下手だなぁ・・という印象を受けました。
一度塞ぐと、そこからどんどん崩れていってしまうんですよね・・。

プロ棋士たちの態度を見るに、皆が伊角を馬鹿にしているようなことは全くないと思います。楽平だって本気で言っている訳ではないでしょう。
でも本人はそういう風に捉えて、どんどん悪い方向へ思考を動かしてしまう・・。
この辺に、伊角の最大の弱点が潜んでいるように思います。。

思うに、負けを認めるのが早いのかなぁ・・。
一度駄目だと感じると、そこから粘らずに一線を自身で引いてしまっているように感じます。
何としても勝ちたい、だから何としても抜け道を見つけてやる。そういう強い気持ちが生まれれば、伊角はぐんと伸びるのかもしれませんね。

1日中囲碁と向き合えるこの中国棋院という空間なら、伊角も嫌でも囲碁と向き合い続けなければならないでしょう。
そこで自身ともしっかり向き合い、何が自分には足りていないのかを伊角にはよく考えてほしいと思います。

実力は皆のお墨付きです。彼が本気になれば、絶対にプロ試験に合格するはずなのです!
今年こそは受かるためにも、この2か月で伊角が多くのものを得られますように。
祈っています!





さて、そして今回も中国棋院の様子が描かれましたが、本当に1日中囲碁をしているんですね!
これだけの環境にずっと身を置いていれば、成長しない訳がありません。
だからこそやる気のない楽平のような者は目立つし、すぐ淘汰されてしまうのでしょうね。

今は年若いから大目に見てもらえても、これで成績が振るわなければ楽平もすぐに帰還を求められることとなるでしょう。
まだ彼にはその重大さが分かっていないようなので、周りにいる大人はハラハラしていることでしょうね・・。

楊が楽平に伊角が負けたことを怒るのも楽平を嫌いだからというのではなく、むしろその将来を案じているからなのでしょうね。
そしてそんな楽平に負けた伊角のことも、本当はやる気が足りないのでは・・?と感じたのではないかと思います。

なので一度伊角と対局すれば、彼が決して遊びで中国に来たのではないことは分かるでしょう。
むしろ昼夜一緒に打つことで、伊角の弱点に気付いてくれるかもしれませんね。
語学も堪能だし、かなり勉強熱心に見える楊ー
彼との出会いが、伊角にとって光明になればと思います。


いやー、中国棋院編面白いですね!
何よりプロ試験のときなどもそうですが、若者が切磋琢磨して周りと共に成長していく姿を見られるのは良いものです!

伊角なら中国での生活を必ず活かして日本に戻ってくるはずです。
彼を信じて見守りましょう(^^)










さて、次回は伊角と楊の対局でしょうか。

かなり実力がありそうに見える楊。
彼との出会いで伊角も刺激を受け、自身の弱い部分を見直していけるといいですね。

初めは趙との再戦のために残った伊角でしたが、最終的に戦うのは楽平になるのかな?
伊角が今度は完璧に楽平を倒すところ、期待して待ちたいと思います。


次回も楽しみです☆