前回、楽平との再戦に勝ち、心のコントロールを少しずつ覚えていった伊角。
彼は自信をもって、プロ試験に臨める手ごたえをこの中国遠征で得て、日本へ帰りますー。

一方、佐為が消えてからずっと囲碁から離れているヒカル。
彼はついにプロ棋士を辞める決意をします・・。

このままヒカルは囲碁を辞めてしまうのでしょうかー?!

感想です☆





中国棋院~第136局 「不戦敗、不戦敗・・」






※以下、ネタバレあり※











◎あらすじ◎

葉瀬中。
ヒカルの母と面談していた担任は、ヒカルがプロ棋士を辞めるかもしれないと聞いて驚いた。

母親はヒカル自身から辞めると聞いたわけではないものの、5月から1度も手合いに行っていないことを気にしていた。
それだけでなく、あんなに明るかったヒカルが今はふさぎ込んでばかりなのだ。
それでいて何も言わない・・。母親は途方に暮れた様子で、ため息をついた。

そしてー母親にはもう1つ懸念事項があった。
それはもしヒカルがプロ棋士を辞めるなら、今から高校受験の準備をしなければならないということだ。
ヒカルの成績を知る担任もまた、それを聞いて頭を抱えるのだった・・。

同刻ー
ヒカルは休み時間をぼうっと過ごしていた。

そこへ、あかりが週刊囲碁を持ってやってくる。
小池(こいけ)から新聞を借りたあかりは、ヒカルが不戦敗になっていることに気付いて理由を尋ねに来たのだった。

それに対しヒカルは何も隠すことなく、もう打たないって言っただろ・・とこだけ答える。
以前の話を冗談だと思っていたあかりは驚き、もう打たないということはプロも辞めるのか?!と大声を出す。

するとーその声を聞きつけたのか、三谷(みたに)もヒカルの元へやってきた。
囲碁部を辞めてプロになったくせに、勝手だな。
彼はそう言うと、きっとヒカルの顔を睨みつける。

2人の間に気まずい空気が流れるのを感じて、あかりが慌ててもう一度尋ねた。
じゃあヒカル・・これからどうするの?

そう問われたヒカルは、受験勉強でもするかなーと気のない返事をする。
あかりに勉強を見てもらおうかとも考えたが、それを聞いた三谷はあかりには大会があるからそんな暇はない!と怒鳴る。

大会か・・。
ヒカルが息をつくと、三谷は更に声を荒げた。
何が大会か、だよ。馬鹿にするな!!打倒海王目指していた頃のお前は、あんなに熱かったじゃないか!!

その剣幕にヒカルが臆したのを見て、三谷は彼に告げた。
今度の大会は、自分も小池と夏目(なつめ)と参加して、もう一度打倒海王を目指してやるーと。

思わぬ言葉に、あかりは眼を見開く。
早速皆に報告しなきゃ・・。
慌てるあかりを連れ、三谷は行ってしまう。

羨ましいだろ。もう2度と仲間に入れてやらないからな!
彼は最後にそう叫ぶと、そのまま背中を向けて消えていくのだった・・。

そうして遠ざかっていく2人を見ながら、ヒカルは2年前のことを思い出していた。
そうだ、あの頃は大会目指して打倒海王の目標を立てて、とにかく夢中だった・・。

それで・・佐為(さい)のこともつい邪険にしてたんだ。
機会があったら、打たせてやるーって。
彼はその時の自分の態度を思い出し、きゅっと眉をひそめる。

あの時・・もっと打たせてやれば・・。
ヒカルはまた佐為のことを思い、1人暗闇の中に沈んでいくのだったー。


ヒカルが手合いを休むようになったことは、彼と関わった者たちも次第に知るところとなった。
椿(つばき)、河合(かわい)、碁会所の老人たち。皆週刊囲碁を読み、ヒカルの不戦敗が続くのを見てヤキモキし、苛立ちを募らせていた。

また和谷(わや)や越智(おち)も、ヒカルの動向は気にしていた。
噂によれば棋士会会長が見かねて休場を薦めても、ヒカルははっきりしない返事だったのだという・・。
彼らは、ヒカルはこのまま囲碁を辞めてしまうのだろうか・・と口にし合う。

一時はアキラのライバルだとも言われたのに、打たなければ才能なんて何の意味もないものだー。
2人もまたヒカルの心情が分からず、焦燥を募らせるのだったー。




















止まり続けるヒカル。

今回はヒカルの不戦敗が続くことを、彼の周囲が気にかける回でした。

5月から2か月・・。
1か月に2回手合いがあったとして、すでに4回ほど休んでいる計算・・。
若獅子戦も休んでいたし、そろそろ囲碁協会が出てきそうな気配もしますね。

棋士会長からの休場の薦めにもはっきり答えなかったということは、辞めることも視野に入れつつもまだ気持ちが定まらないってことかな・・。
今回を見てもヒカルの気持ちは一向に浮上する感じもないし、いよいよ心配です。

ヒカルのお母さんが心配するのも無理ないですよね。
ヒカルといえばうるさくて子どもっぽくて素直なところが取り柄だったような子です。
それが全て失われ、2か月もふさぎ込んでいるとなれば、心配しないほうが難しいでしょう。。

ヒカルと関わってきた周りの人たちも、皆ヒカルのことを気遣っています。
また理由が分からないというのがもどかしいんですよね。
ヒカル自身も説明のできないことだから、1人で抱えるしかないし・・。もどかしいです。

ただこのままこの態度を続けたら、ヒカルの周りからはどんどん人が離れていってしまう懸念もあります。
中学に入ってからのヒカルの知り合いは、ほとんど囲碁でつながった関係ばかりですからね。
いつまでもヒカルのことばかり気にしていられる訳もないので、このままだとヒカルも佐為と共に忘れられた存在になってしまう可能性すらあります・・。

現に和谷や越智は、自分たちの戦いに臨み、そこで切磋琢磨しています。
ヒカルのことばかり考え、心配していられないのです。彼らは皆、戦いが続く厳しい状況の中で生きているのですから。

そしてそういう世界だからこそ、敗者には厳しいものです。
ヒカルもいい加減身の振り方を考えないと、周囲から見放されることもありえますよね・・。

そうならないためにもヒカルにはそろそろ動き出してほしいのですが・・。きっかけが無いのが、難しいところ。
佐為が消えた理由が分かる訳もないし、佐為が何を考えて消えていったのかも分かる訳がないー。
そんな中で、ヒカルはどう気持ちにケリをつければいいのでしょうか・・。

1つ考えたのは、1度囲碁を打ってみることかなぁ。
佐為ともう話し合えない以上、彼の気持ちを知ることは不可能ですよね。
だとしたら、自分の中に生きている佐為の姿を見ることでしか、ヒカルの心を救う手はないのではないかと思うのです。

ヒカルの囲碁は、佐為に教えてもらった囲碁です。そして彼は常に佐為の囲碁を間近で見てきました。
その経験は、ヒカルの中できっと今も生き続けています。
それこそが佐為がいた何よりの証であり、そしてヒカルが囲碁を続けることこそが佐為の囲碁がいつまでも生き続けることにつながるのではないでしょうかー。

佐為は消えた。でもヒカルの中で生きている。
このことに気付けば、ヒカルも今一度囲碁に向かう気になるのではないかと思います。
っていうか、それ以外に道が見つからない・・。どう足掻いても佐為にはもう会うことはできないのですから・・。

ヒカルはそのきっかけを掴むことができるのでしょうか。
夏が終われば、新たなプロ棋士たちが誕生します。
そうしたらどうしたってヒカルの存在はくすみます・・。そうならない前に、ヒカルが再び囲碁に向き合おうと決意してくれますように。。

祈りながら、今回は終えたいと思います。








さて、次回はヒカルの葛藤が続く回でしょうか。

佐為がいなくなったことを、いつまでも受け入れられないヒカル。
しかし周囲の時計は容赦なく動き、彼は次第に取り残されていきます・・。

このまま囲碁を辞めてしまうのか。それとも再起して、佐為の囲碁と共に再び囲碁の道を目指すのかー。
ヒカルに、決断の時は近づいています。

次回も楽しみです☆