前回、風祭との秘密特訓を順調に進めるさやか。
そんな彼女に、滋悟郎は不敵な挑戦状を叩きつけますー。

一方柔の元には、ソ連のテレシコワが!
彼女の目的やいかに?!

感想です☆





決戦前夜~第259話 「テレシコワの憂うつ」






※以下、ネタバレあり※













◎あらすじ◎

テレシコワがやってきたー。
焦り怯える羽衣(はごろも)に、テレシコワは柔(やわら)はここにいるか、と尋ねる。

そこで会社の人間が、柔は今本社の柔道場にいる、と教えた。
羽衣がどうしようかと考えあぐねるうちに、テレシコワはさっさと本社へと向かっていくのだったー。

その柔道場では、柔が滋悟郎(じごろう)と共に稽古に励んでいた。
そこにテレシコワが突然やってきたので、さすがの彼らも驚く。

なぜテレシコワが日本に・・?
疑問に感じながら柔が対応すると、テレシコワは開口一番自分と戦うように言った。
戸惑う柔の横で、話を聞いていた滋悟郎が口を挟む。

彼は世界的に有名な2人が、こんな柔道場で戦うのはもったいなさすぎると話し、戦うならオリンピックでやるべきだーとテレシコワを諭した。
するとテレシコワは眉をひそめ、自分はオリンピックに出られるか分からない・・と呟いた。

昨年ソ連は崩壊し、彼女はロシア共和国の人間となった。
それに伴い、ソ連の柔道チームも解散となったのだという・・。

事情を聞いた柔たちは、国の情勢のせいで柔道を続けるのが難しいというテレシコワの現況を知る。
独立国家共同体チームに入るという手もあるが、それはあくまでも可能性であり彼女がオリンピックに出られるという保証はどこにもない・・。
おまけに生きていくのにも厳しい状況で、彼女はとてもじゃないが柔道をやっている場合ではない、と苦々し気に言い捨てた。

そんな彼女とフルシチョワには、幸い日本企業からコーチとして来てはくれないかーと打診があったという。
今回の来日は、その件も兼ねてのものだったのだー。

だがコーチに就任するということは、事実上現役選手を引退するということだ。
その覚悟をしてきたからこそ、テレシコワは柔と勝負がしたいと申し出たー。
柔たちはようやく事情を全て理解し、どうすべきか・・と思い悩む。

すると滋悟郎が柔に、勝負を受けるように提案した。
驚く彼女に滋悟郎は、今回は事情が事情だから受けてやるべきだーと話す。
テレシコワの切羽詰まったような表情を再び見つめ、柔もまた決意を固めるー


そうして2人は柔道場に戻り、いざ勝負の準備を行った。
滋悟郎の立ち合いのもと、彼らは土俵で向かい合う。
部員たちや羽衣が心配するなか、2人はついに組み合った。

テレシコワの迫力はすさまじく、見ている者は皆恐れおののいた。
だが柔と滋悟郎は、テレシコワの動きに違和感を感じる。
そしてまた、テレシコワも柔の動きに不審を覚えていた。

テレシコワは一旦柔から身を離すと、柔を思いきり睨みつけた。
なぜ本気を出さない!!
彼女の鋭い瞳を柔は真っ向から捉え、2人は見つめ合うのだったー。




















テレシコワの事情。

今回はテレシコワが来日した理由が明らかになり、柔と試合を行った話でした。

テレシコワの来日。
予想した以上に深刻な話でした・・。

これは描いている時期的にこういう話が出たから、描いたエピソードなのかな。
ソヴィエト連邦の崩壊ーわたしには馴染みのない出来事ですが、今のロシアウクライナ戦争を思い起こさせられますね。
こうやって苦しむ人たちがいるというのは、いつの時代も同じなのでしょうか・・。

テレシコワやフルシチョワがあれだけ研鑽を積んできたチームは解散。
オリンピックを控えても、出られるかどうかわからない状況ー
この厳しい条件下で、テレシコワもフルシチョワも生きる方を優先して現役引退を考えているのです。
なんて運命は残酷なのだろう、と思わざるを得ませんね。

世界的に見ても、テレシコワのような有能な選手を失うのは痛いことです。
でもそうは言っても、救うのは並大抵のことではない。そこには国の問題以外にも色々な問題があります。
簡単にテレシコワをオリンピックに出したいと願っても、そうはいかないのが現実です・・。

だからこそ柔も滋悟郎もその事情を汲んで、テレシコワとの対戦を了承しました。
でもいざ試合になったら、柔は本気を出さなかった・・。
これはどういうことなのでしょう。


個人的には恐らく、テレシコワが久しぶりに柔道を行っているというのを、柔が感じ取ったのではないかと思います。
常に稽古に励んでいる彼女なら、テレシコワの筋肉量が落ちていたり動きに緩慢さがあればすぐに気づくでしょう。
恐らくそこに引っかかり、全力を出すのをためらったのではないでしょうかー。

そしてそれもまたテレシコワの努力の問題ではなく、彼女が稽古に励む環境になかったということの証明なのでしょうね。
本当に、どれだけテレシコワやフルシチョワが苦しい状況に置かれ、そこでもがいてきたかが分かりますね。
同じ世界に住む者なのに、こんなに状況が違うとは・・。苦しくなりますが、実際今もそういうことは頻繁にあるのですよね。

柔もまたその状況を目の当たりにし、どのような決断を下すのでしょうか。
彼らが、テレシコワたちがオリンピックに出られるように働きかけるのは難しいでしょう。
でも柔道を守るために、何かできることはあるかもしれません。
たとえ現役同士でもう試合をすることはできなくても、同じ日本にいれば新しい方法は模索できるでしょうから・・。

なんとも悲しい話で色々と考えてしまいましたが、テレシコワとフルシチョワが自分たちのことを思い、この先の未来を選択できるといいですね。
まさかこんな理由でテレシコワたちがオリンピックに出られなくなるかもしれないなんて考えたこともありませんでしたが、時代の波にのまれるということがままあることも私たちは知っています。

どうか2人に良い未来がありますようにー、
そう願わずにはいられません。。










さて、次回はテレシコワが今後どの道に進むのか、決断する回でしょうか。

試合を行ったことで感じた違和感。
その前に柔は、試合に全力を出すのを辞めてしまいます・・。

その理由は一体何なのか。
そして彼らは、テレシコワの進む道筋を見つけることができるのかー。
同じ柔道を志す者として、柔の姿勢が何かテレシコワに良い道を導き出してくれるといいな、と思います。


次回も楽しみです☆