前回、最期の時を迎えた石田派の武将たち。
三成もまた自分のしてきたことの責を噛みしめながら、その命を終えます・・。

そしてやってきた家康の治世。
不穏な空気が漂うなか、彼はどのような世の中を作り上げていくのでしょうかー。

感想です☆




第164席~「Forget ME not」






※以下、ネタバレあり※











◎あらすじ◎

1600年10月。
左太郎(さたろう)は義弟の住む豊岡城に助けを求めてやってきていた。

事情を心得ていた家臣は、すぐに彼を城の中に通す。
そこで左太郎が目にしたのは、織部(おりべ)に英子(ヨンジャ)、家臣たち、そして妻のおとくの姿だった。

驚く彼に家臣は、左太郎への恩を忘れることができずここに逃れてきたのだーと打ち明ける。
家康(いえやす)はすでに左太郎に対して、改易の沙汰を出していた。だがそれでも、運命を共にしたいー。
家臣たちはそう言い、皆揃って頭を下げる。

左太郎はその光景に感動し、しばし言葉を忘れた。
その様子を見ていた織部は、蜂須賀家政(はちすかいえまさ)に客将として招いてもらえるよう算段している、と話した。
左太郎はまたも驚きながらも、その申し出をありがたく受け取った。

これでひと段落だー。
左太郎の件が落ち着いたので、織部は次の問題に取り掛かることにした。
それは英子と、その子供の件だった。

ようやく英子に自分との子がいることを知った織部は、この後どうするかを考えた。
英子は自分1人で育てる、と言っている。
彼自身も、2人が笑って暮らせるのならそれが一番いい・・と感じていた。

そこで英子たちはしばらく、おかねたちの顔のきく乃木村に避難することにする。
これでこの問題も解決だ・・。
織部がほっと胸を撫で下ろすと、今度は又兵衛(またべえ)が口を開いた。

彼は今回の関ケ原の戦いの記録を残そうと、戦争中ずっと絵を描き続けていた。
そして戦争が終わった際に家康(いえやす)にその絵を持って行った。
だが家康は、その絵を買うことなく、むしろ破り捨てたのだー。

この仕打ちは、おそらく家康の数奇への態度のあらわれであろう、と又兵衛は考えていた。
彼は織部に、これからは織部の思うような面白いものは全て切り捨てられるかもしれないーと、警告を発するのだった。

と、そこへ使いの者がやってくる。
彼は与次郎(よじろう)という者が織部に面会を願っていると言い、織部は誰だか分からないままその人物を部屋に通すことにする。

やってきたのは、1人の商人だった。
彼は三成(みつなり)から預かっているものがあると言い、その茶入れを繕ってきたーと懐から取り出した。

その茶入れを見た織部一行は、はっと目を見張る。
なんと渡したときにはあれだけ粉々だった茶入れが、ものの見事に修復されていたのだー。

三成派その茶入れに、自分の意を一切汲んでくれーと言い残したという。
それを聞いた織部は、たまらず吹き出した。

茶入れは欠片の大きさを揃えて接ぐために、わざわざ割り直されていた。
そこまでして正確に修復するなんて、三成以外にやろうと思う者はいないだろうー。
その生真面目さがおかしくて、織部は床を笑い転げる。

だがその時、彼は気付いた。
周囲の者たちが、自分を笑みを浮かべながら見守っていることに・・。

左太郎は言った。
「笑ったら負け」と言ったのは織部自身だ。見事三成の末期の数奇にやられましたなー。

その言葉に、織部は笑いを引っ込めてたじろいだ。
自分が・・三成に・・

そんなことは、プライド的にも、これから家康についていこうとしている自分にとっても、許されないことだった。
彼は負けない!!と叫ぶと、与次郎に茶入れを持ち帰るように言いつける。

自分は石田(いしだ)兄弟に義理などない。豊臣(とよとみ)の世の行く末なんて、背負うつもりもない!!
そう言うと彼は、怒り任せに部屋を出て行くのだった。


同刻ー
薩摩の国に帰った義弘(よしひろ)の横には、作介(さくすけ)の姿があった。

なまりが強く、言葉もろくに理解できないなか、作介は肩身の狭い思いでそこにいた。
家臣たちは皆、早く処分した方がいい、と進言する。
だが義弘は、それにはうなづかなかった。

彼は徳川の人質である以上に、作介を織部の弟子として評価していた。
そのため、手出しはしないように皆に命じた。
家臣たちは不満はありながらも、その決定に従うー。

そんなことが起きているとは露知らず、織部はその夜返却ならなかった茶入れを見ながら過ごしていた。
彼の心には、空しさが募っていた。

自分は数奇の芽を摘んでいたのか・・。

三成の中に芽生えていたその可能性を見抜けず、みすみす死なせてしまったことに、彼は後悔を覚える。
それは以前利休(りきゅう)が三成(みつなり)に対して抱いた思いと、酷似していたのだった・・。




















数奇の芽。

今回は織部が三成から茶入れを受け取った回でした。
 
まずは左太郎。
ようやく織部たちと再会できましたね。もう駄目かと思っていたので、ほっとしました。

やっぱり織部の力はすごいなぁ。無事に左太郎の今後の処遇にもめどをつけて、先回りして場所を提供してくれました。
生きて数奇を楽しめるのなら、どんな立場でもいいですよね。
戦争でそのことが身に染みたと思います。左太郎にはこれからも粘り強く生き抜いてほしいですね。

英子の件も無事に済んだし、そうなると後心配なのは作介のことですね。
今回生きていることははっきりしましたが、今後の処遇についてはまだどうなるのか分からなく不安です。
義弘の態度からするに酷い扱いは受けなさそうだけど、果たして帰ってこられるのか・・。

今後の義弘と家康の付き合いにもよりますが、作介もまたいつか無事に織部のもとに戻れるといいですね。
そしてまた皆で数奇を楽しめるようになったらいいな、と心から思います。
そうなるよう、祈っておきましょうー。




さて、そして今回の本題。
三成の末期の数奇についてです。
今回の織部の後悔は、印象的でしたねー。

だってあれは、利休が三成に感じたものと全く同じじゃないですか。
気づかぬうちに、数奇の芽を摘んでしまっていたー。そして後悔しても、相手はもう死んでいるので遅い・・。
この無力感は、想像するだにキツいものでしょう。

あれだけ普段から数奇を楽しみ布教してきたのに、目の前の小さな芽に気づくことができなかった。
これってある意味、数奇者として失格ともいえると思うのですよ。実際織部や利休は自分のことを、そうやって責めたのではないでしょうか。

全てに気づくことは無理とはいえ、一度気づいてしまうと後悔せずにはいられないのが人間です。
しばらくは織部もこの後悔に苛まれるかもしれませんね。
でも失ったものはもう仕方ないので、これから気を付ければいいとも思います。彼もそう思い、今まで以上に数奇に邁進してくれるといいのですが・・。

でもこういう展開になってはしまいましたが、最後に三成の数奇が織部に伝わったのは良かったな、と純粋に思えます。
豊臣の世の継続は叶わなくても、織部の胸に確実に三成のことは強く刻まれたはずですからー。

最後にしてやりましたね、三成。
改めて、ゆっくり休んでください。







さて、次回は家康の世の始まりでしょうか。

左太郎の件も落ち着き、三成との因縁にも決着がつきました。
ここからの織部は、家康の治世の元で、どれだけ数奇を広めていけるかに力を注いでいかなければなりませんね。

恐らく筆頭茶頭は解任されないでしょうが、武将の数を減らそうとする家康は少しずつ織部の地位も下げてくるでしょう。
それに対し、織部はどう対応していくのかー。

次回も楽しみです☆