今回から、外伝です。

うしおととらの物語は一旦終わりましたが、この物語にはいろいろな登場人物が携わってきました。
そんな物語を、少しのぞき見できればーと思います。

感想です☆



「妖今昔物語」



※以下、ネタバレあり※



◎あらすじ◎

今は昔ー中納言(ちゅうなごん)の元には、吹雪(ふぶき)という美しい娘がいた。
だが彼女は喜怒哀楽を表情に出すことがなく、そのために巷では石姫(いわひめ)と呼ばれていた。

その美しさは町中の噂になるほどで、彼女に邪な思いを寄せる陰陽師も現れた。
その陰陽師斯波朽目(しばくちめ)は、何としても石姫を手に入れようと心に暗い思いを膨らませていくー。

彼はさっそく城に乗り込むと、石姫に自分のものになるよう迫った。
だが姫の顔色は変わらず、それがまた斯波の心を激しく高揚させた。

そこへ、姫を守る使命を持つ随身の井上無明(いのうえむみょう)が間に入る。
斯波は彼を疎ましく思い、式神を差し向けた。

無明は果敢に戦い、怪我を負いながらも何とかその式神たちを退ける。
すると斯波は面白い・・と笑い、四日後にまた来るからその時に決着をつけようーと言い残し去っていったのだった。

その夜は無明の活躍をたたえて酒宴が開かれたが、無明は四日後のことを考えると気が気ではなかった。
彼は姫を石姫と呼ぶことを嫌い、ただひたすらに任務に忠実な男だった。

そんな彼でも、斯波と直接戦って勝てる見込みは薄いだろうー。
酒を口にしながら、彼はどうすればいいのかを考える。

無明が石姫を大事に思うのは、以前少しやり取りしたときの姫の言葉にあった。
無明は子供と遊ぶのが好きだった。
その光景をいつみられたのか、石姫と面会した際に彼は言われたのだ。
お前が羨ましい・・と。

その言葉に、無明は石姫も本当は感情を表したい人なのだーと感じた。
そしてそれ以来、どうにも姫のことが気になってたまらないのだった。

だから石姫をみすみす斯波にやることなど、彼には考えられなかった。
そこで翌日、無明は平安京一の陰陽師と言われる賀茂(かも)の元を尋ねた。

力を貸してほしいーそう頼み込んだが、あいにく賀茂は所用で家を留守にしていた。
四日後には到底間に合わないらしい・・。
それを知った無明は落胆する。

すると使いの者が、事情を尋ねてきた。
石姫を助けたい。彼女の内に秘められている感情を引き出し、楽にしてやりたい・・。

無明がすべてを吐露すると、使いの者は1つだけ方法がある・・と口を開いた。
だがそれは恐ろしい方法だ・・。
彼はそう警告してから、詳細を無明に語ったー

屋敷を離れた後、無明はさっそく使いの者に教えてもらった破れ寺へと出向いた。
そこには妖怪が棲みついていて、その妖怪なら斯波に匹敵するかもしれない・・。
その可能性に賭け、無明は姫の命をやるからと嘘の条件で妖怪をおびき出そうとする。

すると彼の話を聞きつけ、1匹の真っ白い毛を持った妖怪とらが出てきた。
無明は作戦の成功を確信し、言葉巧みに妖怪を城のほうへと連れ出すのだった。


そして四日後の夜ー
城は警備の者たちで囲まれものものしい雰囲気を漂わせていた。

しかしその警備をかいくぐり、斯波の術は発動された。
まずは石姫に付き添っていた女官の体に式神を取り付かせ、そこから侵入を図ったのだ。

騒ぎを聞きつけた警備の者たちは、急ぎ斯波の勢力と戦おうとした。
だが斯波は術でそれらを軽々といなし、ついに石姫の元にたどりついてしまうー。

石姫は斯波には付き従わない、とはっきり言葉で伝えた。
そして斯波の術を払いのけると、その姿をとらに変えるー

そう、石姫はすでに無明の作戦でとらと入れ替わっていたのだ。
彼は軽々と式神を食い散らかすと、斯波に向かった。
勝ち目がないと悟った斯波はターゲットを変え、奥に控える石姫の元へとまっすぐ駆けだす。

そこにー今度は無明が立ちはだかった。
彼は刀で応戦すると、激しく斯波と競り合った。
そしてー激戦の末、ついに斯波の命を捕らえる。

斯波は目的を果たせぬ無念のなか、散っていった。
その死にざまを見届けた無明もまた、戦いで深手を負っていた。
彼は石姫が見守るなか、座り込んでしまう・・。

石姫はそんな彼を気遣った。
その心に、かすかな異変が生じるのを彼女は感じる。

この男に・・わたしはいつも護られてきたのだ・・。
彼女はそのことを嬉しく思い、これからも側にいてほしいーと願った。
その思いが彼女のこわばった表情を溶かし、かすかな笑みを浮かべさせるー

だがそこに、とらが割って入った。
彼は約束通り姫は食わせてもらうーと石姫を連れ去りその場を去ろうとする。

石姫はとらの腕の中で自分の死期を悟った。
その瞬間、彼女の胸に現世への未練があふれ出す。

死んだらもう無明といられない。無明も自分が死んだらきっと後を追ってしまうー!

彼女はもがき、必死に叫んだ。
すると無明が追ってきて、とらにあれは嘘の条件だった・・と明かした。
嘘をついてすまなかった。許せなければ、仕合ってもらっても構わないー・・。

彼の決意を見て取ったとらは、それならーと戦う意志を見せた。
2人は真っ向からぶつかり合い、無明は賀茂の使いの者から託されていた札を取り出す。

その札は賀茂が霊気をこめてつづった符がこめられており、とらにも効果は抜群だった。
巨大な気を受け、とらは吹き飛ばされる。
そのまま彼は悪態をつきながら、夜の山へと戻っていくのだった・・。

今度こそ、無明はボロボロになった。
石姫は急いで彼を介抱するが、彼はもう動くことすらままならなかった。

最後に・・と無明は涙をこぼす石姫に、1つ頼みごとをする。
それは彼女の笑顔を見たいーというものだった。

石姫は困惑したが、無明に言われたとおり口の端を動かしてにっこりとほほ笑んでみせる。
その表情が柔らかく感情にあふれているのを見て、無明は安心して目を閉じた。

ああ、やっぱり吹雪姫は美しい・・。
そのまま彼は息を引き取る。
しかし彼の英雄譚は、その後ずっと引き継がれていったのだったー




















遠い京の物語

今回はうしおたちと出会うずっと前に、とらが関わった京での事件の話でした。
いきなりかなり昔の話で驚きましたが、とらがその頃から元気そうでよかったです。
この頃から人間に対する優しさのようなものも垣間見えたので、彼の元々の気質なのでしょうね。
とらと出会う前の彼を知ることができたの、うれしかったなぁ。

物語としてはあまり珍しい話でもなかったですが、短編として見るとよくまとまった切なくも読後感が温かい素敵な話でした。
常に気を張って生きているために感情を喪ってしまった姫と、そんな姫の内に潜む思いを見抜き側にいたいと願った男性の物語・・。

2人が結ばれることは残念ながら叶いませんでしたが、身分の差もあったからこれでよかったのかも。
無明が亡くなったのは悲しいことですが、ふぶき姫はちゃんと彼から受け取ったものを大事にこれからも生きていくのでしょう。

きっと感情豊かになった姫はもっと人気が出て、彼女を大切にしたいと願う優しい人たちに囲まれた生活を送るようになるのでしょうね。
彼女のこれからの人生が彩豊かなものになることぉお願わずにはいられません。
たぶんそれが無明が一番望んだことでしょうから・・。

さてとらについてですが、この後とらはまた長い人生を生き、やがて獣の槍と共に眠りにつきうしおと会うのですね。
彼には他にも色々な出会いがあったのかと思います。
でも最終的にはうしおたちと楽しく過ごしてくれているといいなぁ。
今回の話を見て、改めてそう強く思いました。

無明とも長く付き合えば気が合いそうだったけど、やっぱりとらのペアはうしおしかないですね!
まだ時間はたっぷりありますが、ここでのとらには未来には良いこともあるーと思ってくさらず生きていってほしいものですね。

未来に2人の出会いが待っているって、なんかロマンチックです。
その物語を読むことができて幸せだったんだなーと改めて強く思わされる物語でした。







さて、次回は別の人物の物語でしょうか。

個人的に見たいのはうしおと麻子のその後とか、紫暮と須磨子のなれそめとかかなぁ。
藤田先生の描く恋愛が見たいなーと期待しています笑

まぁどんな話でも面白いでしょうから、大歓迎なんですけどね。
うしおととらの世界、もう少し味わい尽くしたいと思います。

次回も楽しみです☆