前回、妻子を失った後桃花源で力を手に入れ、復讐を胸に元の世界に戻っていった鏢。
彼の経緯が外伝では描かれました。

3話目は誰に焦点が当てられるのでしょうかー?
感想です☆



第3話「里に降る雨」




※以下、ネタバレあり※




◎あらすじ◎

戦いが終わる少し前ー
麻子(あさこ)は神居古潭でうしおを救った際に使用した櫛を、返すためにうしおの家を訪れていた。

その日は雨が降っていて、うしおは用事があっていなかった。
代わりに紫暮(しぐれ)が出てきて、2人はしばし雨を眺めながら言葉を交わす。

その時ー麻子は今が好機ではないか?と唐突に思った。
そこで彼女は紫暮に近づき、うしおの母親について話してくれないかー?と頼み込む。

紫暮は戸惑いながらも、麻子の押しが強いので渋々口を開いた。
そうして出てきたのは、今から16年前の話だった・・。

当時も法力僧として全国で妖怪退治をしていた紫暮は、依頼を受け九州の伊万里に来ていた。
そこで彼は着物を着た1人の女性ー須磨子(すまこ)と出会う。

須磨子は屈託なく、たまたま道で出会っただけなのに気安く話しかけてきた。
だが当時の紫暮は妖怪退治に疲れていたのか、妙にむしゃくしゃしていて殺伐とした雰囲気を放っていた。

光覇明宗でもそのことは話題になり、僧たちはそんな態度だから紫暮は獣の槍の継承者に選ばれなかったのだ・・と口々に噂した。
現に紫暮は継承候補者として育てられてきたが、自身の家の蔵の扉を開けることができないでいた。
そのこともまた、紫暮の胸を大いにかき乱し、彼をイラつかせたのだった。

そこでお役目様は、紫暮を1人で任務に出した。
その任務は毎年のように依頼を受けているもので、1人でも十分に足りるものだった。
少し頭を冷やすためにもー紫暮は任務を受け、こうして伊万里に来たのだった。

一方須磨子は、ある人の紹介で静養に来ていると話した。
彼女は世間のことに疎いため、田舎のほうが性に合うのだ、と言った。

確かに紫暮と出会ったとき、須磨子は傘の開け方もわからないでいた。
それなのに・・その後に須磨子から発せられた言葉に、紫暮は驚かされる。

彼女は紫暮の来訪の目的を、妖怪退治だと当てたのだー。
不審がる彼に須磨子は自分のことは明かさず、曇りない瞳でどのような用件なのだ?と問う。
その瞳に動かされたように、気が付くと紫暮は依頼者とその事件について語っていた。

今回の事件の依頼者は、伊万里で陶磁器を扱っている一家だった。
彼らの家には娘が1人いて、今年20歳になる。
その娘がここ5年ほどこの時期に化け猫が襲われるようになった。それを祓うのが紫暮の仕事というわけだった。

その後紫暮は須磨子を静養先まで送り届けると、依頼者の元へ向かった。
そしていつも通り化け猫と戦い、その身を封印したのだった。

依頼者家族は何度も礼を言ったが、何年も同じことが続きすっかり衰弱しきっていた。
発端は自宅の改築の際に祠を倒してしまったことが原因だろう。
しかしお祓いもして、新しい祠も建て直した。

それなのになぜ災厄は止まらないのだろう・・。
家族は頭を抱える。

少し調べてみるか・・と紫暮はこの地にとどまることにした。
すると帰り道で、彼はまた須磨子と遭遇した。

今度の彼女は、子供たちとはないちもんめをして遊んでいるところだった。
紫暮に気づいた須磨子は、一緒に遊ぼうと彼を誘う。
そしてあっというまに輪の中に引き込むと、子供たちと紫暮を馴染ませてしまうのだった。

初めは抵抗していた紫暮も、須磨子と子供たちの笑顔の前では怒りを見せ続けることはできなかった。
だが彼はどこか、普通に暮らす人々を見下していた。
すっかり平和ボケして、生活をするためだけに生きて何の目的も使命も持っていない・・そう思っていたのだ。

それを口にすると、須磨子はうぬぼれてはいけない、と紫暮を諫めた。
人は生まれたときから使命や目標を持っていたわけではない。それに氏名や目的は人それぞれ違うもので、そこに大小の違いがあっても貶めていいものではないーと。

そう説く彼女の目に涙があふれているのを見て、紫暮は反論することもできなかった。
そのまま2人は別れ、紫暮はまた翌日から妖怪退治の任についた。

何度祓っても、娘に取り付く妖怪が失せることはなかった。
そこで家族は、ここを離れて紫暮に娘を嫁がせたい・・と言いだした。
もう恐ろしい思いはやめにしたいのだ・・。

父親は紫暮に、ゆくゆくは法力僧をやめて自分の仕事を継いでほしい、とも言った。
嫌気がさしていた法力僧の仕事から離れられるのなら好都合だー。
そう思いながらも、紫暮は一旦考えさせてくれ・・とその場では明言を控えるのだった。


翌日、一家の家の周りを探っていた紫暮は、重大な見落としに気づいた。
なんと家族が一度ひっくり返した壺とそっくりなものがもう1つ見つかったのだ。

つまり、壺は2つ存在した。
呪いが続くのも、このもう1つを見落としていたからだったのだー!

そのことに気づいた紫暮は、急いで娘の元へと走った。
壺が2つあるということは、妖怪も2体いるということだ・・

その推測どおり、今娘の前には2体の妖怪が現れていた。
間一髪間に合った紫暮だったが、元々強力な妖怪が倍に増えたのだ。
さっそく苦戦を強いられる形となってしまったー。

このままではやられてしまう・・。
どうすべきか考えを巡らせていると、ふとものすごい力の結界がその場に張られた。
皆が驚き視線を向けるとーそこにあったのは、なんと須磨子の姿だった。

彼女の力には見覚えがあった。そう、お役目様が使っていたー・・
そこで紫暮は気付く。
まさか・・彼女は3代目のお役目様なのか?!

須磨子はうなづくと、自分は獣の槍を使う子を産むためにこの世に戻ってきた存在なのだ、と明かした。
その猶予は2年のみ、その間に彼女は夫を見つけ子を産まなければならなかったのだー。

使命だからと呑み込みはしたが、彼女は残していくしかない夫と子供を思い一歩を踏み出しきれずにいた。
その話を聞いた紫暮は、自分の愚かさを突き付けられて苦悩する。

須磨子は自分の思いや感情をすべて殺し、運命に従おうとしている。
それに比べて自分は何だ、自分が優れていれば何でもうまく行くと思い、そうでなければ世の中を憎んだ。
まるで子供じゃないか・・。

彼は気付く。自分は自分の使命を貫くしかないのだ、と。
それこそがー妖怪を封じるという使命こそが、自分が生きる理由なのだ、と。

そこで紫暮は力を集中させ、妖怪から須磨子を守った。
彼の最大化された法力はついに2体を捕らえ、彼らを壺の中に返していく・・。

これで災厄は終わるだろう・・。
紫暮は家族にそう話すと、結婚の話はなしにしてほしい、と言った。
彼は今一度、自分の務めと向き合ってみようと考えたのだ。

娘は黙ってそれを受け入れた。
きっと彼には大事な人がいるのだろう・・。
彼女には紫暮の瞳が、誰かを追っているように見えたのだー


その後、また雨の日に2人は出会った。
須磨子は傘を差しだすと、恥ずかしそうに微笑み言った。
わたしの2年、預かっていただけますか・・?

紫暮は戸惑い赤くなりながらも、その申し出を受け入れた。
須磨子は、もう子供の名前も決めてあるのだーと明るく話す。
そうして2人はお役目様に会い、無事祝言を上げたのだった・・。

ー話を聞き終えた麻子は、胸がドキドキするのを抑えられなかった。
わたし・・おじさんもおばさんもどっちも好き!とっても素敵!!
彼女はこみあげてくる涙を拭いながら、ちょうど帰ってきたうしおたちを出迎えに行くー

素敵・・か。
麻子に言われ、紫暮はちょっぴり照れ臭かった。
ちっともそんなんじゃなかったけどな・・。

それから彼は空を見上げ、須磨子を思い出し声をかけた。
なぁ須磨子、それでもわたしは後悔などしていないぞ・・。




















紫暮と須磨子

今回は紫暮と須磨子が出会ったときのエピソードでした。
やったー、見たかった話しが見れて大満足です!

2人のなれそめ気になっていたんですよねぇ。スピード婚のようだったので、どのように出会って互いに好きになったのか・・とか。
ただ2年しか時間がないという部分はやっぱり切なかったですね。
まだ赤ん坊のうしおを残し、新婚で大好きな夫を残し・・須磨子はどんな気持ちで白面の者の元へ戻ったのでしょうか泣)

紫暮だって、使命だとわかっているとはいえどんな気持ちで須磨子を送り出したのでしょうかー。
互いにしっかりと考えられる2人なので、日々刻刻と近づいてくるその日まで大事に時を過ごしたのだろうとは思います。
でも今回の2人を見ていると、きっと側にいたかっただろうなぁ、今一緒に暮らせるようになってよかったなぁと思わずにはいられませんね。
時間はかかってしまったけれど、2人が今幸せで本当に良かったと思います。

それにしても、若い頃の紫暮は尖っていましたねぇ笑 なんか凶羅を彷彿とさせるかも。
考えたことなかったのですが、紫暮の代でも獣の槍の継承候補者を育てていたのですね。そこに紫暮は選ばれていたけれど、結局槍は彼を選ばなかった・・。

日輪たちを見てきたからこそわかりますが、人生を懸けての挑戦に敗れたのですから自暴自棄になりたいこともあるだろうなぁ・・と思いました。
普通の生活を捨て、修行にまい進してきたのでしょう。それに加え成人を迎えるとこの先の人生のことも考えてしまう頃でしょう。
気分がくさくさして他人に頑なな態度を取ってしまうのも無理ないかな・・と同情してしまいました。

そんな矢先に紫暮の前に現れた須磨子。
おそらくお役目様は2人が出会うのを見越して、紫暮を任務に向かわせたのでしょうね。彼1人で行かせたのも、紫暮を須磨子の伴侶にすると決めてのことでしょう。

そして2人は出会い、互いに惹かれ合った。
お役目様がどこまで読んでいたのかはわかりませんが、2人は不器用ながらも周囲の人に優しい部分は同じですもんね。きっと通じ合える部分があると考えたのではないかと思います。

須磨子のことを知るなかで、彼女がお役目様の任務を負っていると知った紫暮。
彼女には2年しか時間がなく、その中で結婚し獣の槍を操る子を産む使命を帯びていることも知ります。
2年・・あまりに短すぎる泣)

自分の使命に疑問を持ち、くさしている紫暮。
それに対し、自分の使命を粛々と受け入れ、その中でも楽しみを見出そうとしている須磨子。
紫暮は自分の態度を恥じ、自分の使命に真摯に向き合っていこうと決意するようになりますー。

そうやって互いに刺激し合い寄り添い合える関係こそが、夫婦というものなのかもしれませんね。
紫暮と須磨子は互いへの尊敬の気持ちがあるから、たとえ離れても気持ちが離れることがなかったのではないでしょうか。
そういう関係が構築されていったことがよくわかるエピソードだったと思います。

最初に書いたように、この先の運命を思うと2人共真に心穏やかな日は少なかったかもしれません。
でも短い時間だったとしても、ちゃんと心が通い合えばその後も思い合っていけるものなのですよね。
うしおがああして素直な子であるのも、2人の血を引いている何よりの証拠だと思います。

甘い雰囲気は少なかったですが、信頼関係を築いていく過程がしっかりと描かれていて、麻子の言うように素敵な話でした。
これからはうんと幸せな生活を送ってほしいですね。
うしお一家の幸せを、遠くより願っています(^^)






さて、次回は別の人物のエピソードですね。
早くも3人分のエピソードが終わり、ここからは後半戦です。

次は一体どのような物語が綴られるのでしょうかー。
次回も楽しみです☆