前回、紫暮と須磨子の出会いが描かれました。
うしおが生まれるまでの短い時間を見てしまうと、これからの彼らの生活が幸せなものであることを願ってやみませんね。

さて、今回は誰が主役の物語なのでしょうかー。
感想です☆



第4話「雷の舞」




※以下、ネタバレあり※




◎あらすじ◎

木曽義仲(きそよしなか)は、戦いに敗れたことを痛感していた。
ここまでかー・・。
彼は巴(ともえ)という女性武士を呼び、自分はここで討ち死にするから逃げて生き延びるようにーと命じる。

巴は自分も最後まで付き合うと言ったが、義仲は効かなかった。
彼の意志は固い・・。
観念した巴は、彼との過去を束の間回想するー

それは13年前のことだった。
当時木曽の血には妖怪が出回っていて、人々を恐れさせていた。

巴はその当時から義仲(当時の名を駒王という)を慕っていて、女性でありながら彼と共に戦うことを願っていた。
周囲の者は、それなら妾になればいいのにーと巴の決意を笑う者ばかりだった。
駒王には許嫁がいる。同じ立場にならなければ、妾で留まるのが当時の巴の立場だった。

彼女はそれが耐えられず、毎日鍛錬に励んだ。
そんな巴を周囲の者ーとりわけ家族は困惑顔で見守るのだった。

そうして鍛錬中、山へ入ったときのことだった。
巴は老婆の尼が兵士たちに、一緒に妖怪退治に連れていってほしいと頼んでいるところに出くわす。

兵士たちはその頼みを一蹴し、彼女を置いてさっさと行ってしまった。
そこでこの辺の地理に明るい巴が、尼を案内することにする。

尼は妖怪と対話するために、山に入ったと道中語った。
妖怪と対話すれば、改心することもあるのか・・?
巴が尋ねると、尼は力強くうなづく。
慈悲を説き時を待てば、必ず望みは叶うものだ・・と。

それを聞いた巴は、自分の身に照らして考えこんだ。
彼女は最近、自分の武術には限界があることを感じていたのだ。

どんなに鍛錬を積んでも、男性のような力は出せない。いずれその差は決定的になり、自分は駒王についていくことができなくなってしまうのだろう・・。
それを思うと悔しくて不安で、最近の巴は落ち着かない心持でいた。

やっぱり自分は女だから、駒王を待つことしかできないのだろうか・・。
思わずそのことを口に出してしまうと、尼はそうだ、とうなづいた。
仏の慈悲にすがって待っていれば、必ず物事は良い方に変化していくのだー・・

その時だった。
2人は目の前に死体の山が広がる光景に出くわし、はっと息を呑んだ。

その遺体はどうやらさっき尼を置いていった兵士一団のもののようだった。
恐怖に動けない2人の前に、次々に妖怪が姿を現す・・。

その集団の中央には、ひときわ白い毛が目を引く妖怪の姿があった。
彼は皆に長飛丸(ながとびまる)と呼ばれていて、巴を食うのは自分だ・・と下卑た笑みを浮かべている。

妖怪たちは一気に巴たちに襲い掛かった。
巴は短刀を抜いて構えるが、相手は数が違う。
あっというまに攻撃され、彼女は動くことができなくなってしまった・・。

せめて尼だけでも・・と逃がそうとしたが、尼はこの状況でもなお妖怪たちに慈悲を説こうとした。
その体に妖怪たちは食らいつこうとするー
と、その時信じられないことが起きた。

なんと老婆の中から、本物の長飛丸が現れたのだ。
どうやら彼は自分の偽物を倒すために、人間に化けていたらしい・・。
巴は目の前で長飛丸の無双が繰り広げられるのを、ただ唖然と見守るー。

どうして偽物を倒すためだけにわざわざ戦う・・?違う土地で知らないふりをして過ごせば、何も問題がないはずなのに・・。
巴には、あえて妖怪の大群の中に飛び込んでいく長飛丸の気持ちが知れなかった。
すると長飛丸は、そんなの待ってたってなにもいいことがないからだよーと言い捨てた。

尼には待つことが大事だと言わせたが、実際はそんなことはない、ととらは話した。
待ってたっていいことなど起きない。自分から動かなければ、欲しいものは手に入らないんだー!!

ーその後、長飛丸はすべての妖怪を倒し、山奥へと消えていった。
巴は村へ戻ったが、その胸には熱い決意が秘められていた。
待つだけでは何も手に入れられない・・。


それからの巴は、一層の鍛錬を積むようになった。
そして今ー義仲と共に戦に出て、彼の横を支えるまでになれた。

・・これから自分たちは死ぬのだろう。
ついに追い詰められはしたが、今の巴には悔いはなかった。

義仲と共に戦えた。最後の時まで、彼と同じ場所で笑い合えた。
巴は義仲と笑顔で別れると、向かってくる敵の元へと飛び込んでいく。

きっとあの妖怪と出会わなければ、今こんなに満ち足りた気持ちになることはなかっただろう。
女として舞などを踊りながら、帰らない人を待つ運命だったかもしれない・・。

その後彼女は敵を倒し、1人戦線を抜けることができた。
それが義仲の望む道だとわかっていたから、仲間のことは振り返らなかった・・。

彼女は1人生きる道を走りながら、ああでも・・とほほえむ。
わたしの心は駒王、いつもお主の傍らで舞っていたのだよ・・。




















巴の舞

今回は巴という女性がとらと出会い、その人生の指針を得た話でした。
今回もとらの話でしたね。それだけ彼も生きてきた機関が長いということなのでしょう。
その時々でいい出会いを体験していたようで、なんだかうれしい気持ちになりました。

こうやって様々な人と出会って色々なことを感じて、とらは最終的にうしおと出会ったんだなぁ。
とらの過去を思うと今でも切なくなるんですが、彼の長い人生が辛い思い出ばかりでなくて本当に良かったと思います。
いい出会いに感謝ですね。

今回の主役は巴御前。
あまり詳しく知らないのですが、藤田版は美しく凛々しくて素敵な女性ですね。
でもその裏では女であることに悩み続けた人生を送ってきた人でもありました。

駒王を慕い、彼と共に生きたいと願った巴。
しかし身分の違いから正妻になる道はなく、また巴自身もそういう形での関わりを望みませんでした。
巴はあくまで同じ立場で駒王のそばに立ちたかったのですね。

けれども性別の違いが、彼女の望みをどこまでも阻みました。
周りの目だけでなく、年齢を重ねるにつれて確実に大きくなっていく力の差ー
それらが巴を蝕み、いつしか彼女から笑顔や自信を奪ってしまっていました。
わかる、どうにかしたいと思ってもどうにもならないことってあるんですよねぇ・・。

ただ彼女はとらと出会ったことで、とにかく突き進むしかないこともある、ということを知りました。
あれこれ考えず、とにかく前に進んでみる。そうしないと見えない景色もある。

とらの言葉は簡潔でしたが、すごく深く考えさせてくれる提起でもありましたよね。
こういうところが苦労しながら長く生きている、ということなんでしょう。

その言葉や姿勢に励まされ、いざ戦の中で駒王の隣で戦った巴。
結果は敗北により駒王は命を落とすことになりましたが、最後まで一緒に会った変え信頼し合えたことで巴には未練は残りませんでした。

彼女は自分が望んだ場所を手に入れたのですね。
結果的には辛い別れとなりましたが、それまでの時間が彼女にとってかけがえのない大切な時間となったことは幸せなことでした。

その後巴はたくましく生き延びたようですが、どんな人生を歩んだのでしょうね。
きっと辛いことも乗り越え、笑顔の多い人生だったのではないでしょうか。

美しい舞いが最後に描かれましたが、まさに彼女の燃えるような人生を表現したものだったと思います。
とらにもその炎のまばゆさ、伝わったかな?
彼がたまに過去のことを思い出しているといいなーとこれまでの物語を読むと思いますね。

今回も胸に切と迫るいい物語でした。
歴史ものも藤田先生はうまく描きますねー!短編なのに熱く満足させてくれる物語・・さすがというよりありません。
もっと読んでみたいな。

次回はどの人物にスポットが当たるのでしょうか?
楽しみですね。






ということで、次回も新たな物語が紡がれます。
残りも少ないですが、ここまで胸を熱くする様々なエピソードを見事描き切ってくれたので、この後も感動が待っていることでしょう。

次はどんな人物の物語が描かれるのかー
次回も楽しみです☆